記事監修

新型コロナウイルスの影響により、多くの企業でテレワークが採用されるようになりました。
テレワークは、通勤時間や移動時間がない分効率的で、仕事とプライベートを両立させやすい働き方ではありますが、一方で問題もあります。

それが、残業の取り扱いです。
テレワークで残業しないよう会社から言われたり、残業代が支給されなくなったりした方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、テレワークと残業および残業代について、よくある疑問を解決していきます。

テレワークで残業をしても残業代をもらえないのか?

「テレワークで残業をしても残業代はもらえない」と思っている方は多いですが、実際はどうなのでしょうか。
残業の定義とともに確認していきましょう。

残業の定義

残業は、法定時間外残業と法定時間内残業の2種に分けられます。

●法定時間外残業
労働基準法で定められた「1日8時間、週40時間まで」という上限を超えた労働のこと

●法定時間内残業
各企業で就業規則として定められている労働時間(所定労働時間)を超えた労働のこと
(例:10時〜17時(昼休憩1時間)が就業規則で労働時間と定められている場合、所定労働時間は6時間となる)

法定時間外残業が労働基準法で定められた基準によるものであるのに対し、法定時間内残業は各社の就業規則に基づくものです。

(残業の定義については、こちらの記事で詳しく解説しています。「労働基準法における「残業」の定義とは?」

テレワークでも残業代は支払われる

残業代の支払いについては、会社に出社して仕事をしようとテレワークであろうと扱いは変わりません。テレワークであっても、残業した時間分の残業代は支払われなくてはなりません。

法定時間外残業については、労働基準法により、従業員への25%以上の割増賃金の支払いが会社に義務付けられています。一方、法定時間内残業については、割増はないものの残業した時間分の賃金は支払われます。

「テレワークで残業をしても残業代はもらえない」という考えは、間違いです。テレワークを理由に会社から残業代が支払われない場合、労働基準法違反により、従業員は会社に未払い残業代を請求できる可能性があります。

会社から「テレワークは残業禁止」と言われている場合、残業しても残業代はもらえないのか?

テレワークにおいては、会社から残業禁止の指示が出されている場合もあるでしょう。このような場合、もし残業しても残業代は受け取れないのでしょうか。

「テレワークは残業禁止」の指示が会社から出されている場合、従業員はその指示に従う必要があり、原則残業はできません。残業禁止の指示が出ているにも関わらず、従業員が自身の判断で残業を行った場合、それは会社の指示に基づいた労働ではないとされ、残業代を受け取ることはできないと考えられます。

ただし、「テレワークは残業禁止」と決められているにも関わらず、実際の業務に残業を余儀なくされるような実態がある場合は注意が必要です。例えば、「就業時間内に終わらない仕事量を抱えている」ケースや「残業せざるを得ない業務スケジュールが組まれている」ケースなどです。

このようなケースでは、残業禁止と決められていても、実際に残業しないことは不可能です。
そのため、残業代を支払わないとする会社の判断は違法として、従業員は未払い残業代を請求できる可能性があります。

つまり、「テレワークは残業禁止」と指示されている場合に、残業を行って残業代を受け取れるかどうかは、「残業せざるを得ない業務実態があるか」によって判断されると考えると良いでしょう。

なぜテレワークの場合は残業禁止というルールができるのか?会社側から見た理由

では、なぜ会社は「テレワークは残業禁止」というルールを作るのでしょうか。
その理由は、「労働時間を正確に管理しにくいこと」「残業が長時間になりやすいこと」にあると考えられます。

理由1:労働時間を正確に管理しにくいこと

テレワークには、ひとりひとりの従業員の労働時間を管理しにくいというデメリットがあります。勤怠管理システムを導入する企業は多いものの、在宅勤務であるテレワークはプライベートとの区切りもつけにくく、会社での勤務のように正確に労働時間を管理するのは困難です。

労働時間を正確に管理できない以上、残業の実態も正確に掴むことは難しいため、「テレワークは残業禁止」とされることが多いのです。

理由2:残業が長時間になりやすいこと

前述の通り、在宅勤務となるテレワークでは仕事とプライベートを明確に分けることが難しい傾向にあります。そのため、いつまでも仕事を続けてしまい、その結果残業が長時間になってしまうケースが発生しています。

従業員のワーク・ライフバランスの充実はもちろん、残業代というコストの面でも、長時間の残業は好ましいものではありません。会社は、長時間残業を避けるため、「テレワークは残業禁止」というルールを設けているのです。

テレワークを理由に固定残業代はカットされてしまうのか?

残業代として、固定残業代(みなし残業代)が支給されている方もいるでしょう。
固定残業代は、あらかじめ一定の残業時間を定め、その分の残業代(一定額)が毎月支払われる残業代の制度のことです。

では、固定残業代が支給されている会社でテレワークが採用され、「テレワークは残業禁止」というルールが定められた場合、それまで支給されていた固定残業代は支給されなくなってしまうのでしょうか。

固定残業代は、実際の残業時間があらかじめ定めた残業時間に満たない場合でも満額支払われる賃金です。「テレワークは残業禁止」というルールになったからといって、この固定残業代を会社が一方的にカットすることはできません。
なぜなら、固定残業代のカットによって、実質的には賃金の減額が行われることになるためです。

賃金の減額など、労働条件の不利益な変更が行われる場合、会社と従業員の間には「労働協約」「就業規則の変更・変更の承認」「個別同意」などが必要になります。そのためには、会社側は労働組合など従業員との話し合いをする必要があるのです。

「テレワークは残業禁止」というルール設定に伴い、固定残業代が廃止される可能性はありますが、会社側が一方的に決定することはできず、諸々の手続きが必要であることを覚えておいてください。

未払いの残業代を請求するためにできること

未払いの残業代を会社に請求するためには、「残業の証拠集め」と「残業代の計算」が必要です。
証拠集めと残業代の計算が整ったら、会社との交渉や労働審判、訴訟などによって、残業代を請求していくことになります。
ここでは、未払いの残業代請求のための準備となる「残業の証拠集め」と「残業代の計算」について詳しくご紹介しましょう。

残業の証拠集め

未払いの残業代を請求するには、残業の証拠が必要です。
証拠として有効なものの例を挙げてみましょう。

・労働契約書、雇用通知書
・就業規則
・給与明細、源泉徴収票
・メールやチャット
・パソコンの使用情報
・勤怠管理システムの情報
・業務報告書
・その他メモ など

未払い残業代の請求にあたっては、「残業していたことの証拠」「残業内容の証拠」「労働契約の証拠」「残業代が支払われていない証拠」を揃える必要があります。
特に残業を指示されたメールや書類などは重要な証拠になるので、消したり捨てたりしないよう気をつけてください。

証拠はできるだけ複数集め、客観的に見て残業の事実が確認できるようにしておきましょう。

(残業代の証拠については、こちらの記事で詳しく解説しています。「残業の証拠を残すにはどうすればいいのか」

残業代の計算

残業代は、以下の計算式で算出することができます。

●残業代の計算式
1時間あたりの基礎賃金×残業時間×1.25(割増率)
※1時間あたりの基礎賃金=基本給や諸手当÷1ヶ月の所定労働時間

1時間あたりの賃金を求める際の諸手当には、含めるものと含めないものがあるので、よく確認しておいてください。

上記計算式からもわかるように、法定外残業の場合の残業代は基礎賃金の25%割増となります。(法定外労働かつ深夜労働の場合は50%増しになるケースもあります。)
ただし、法定内残業の場合、賃金は割増にはなりません。

(残業代の計算方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。「残業代の計算方法は?」

まとめ

残業代が出るかどうかは、勤務形態に関係しません。会社で仕事をしようと、テレワークであろうと、残業をしたのであれば残業代は支給されます。

ただし、「テレワークは残業禁止」という指示が出されている場合は扱いが異なります。会社の指示に従わず自発的に行う残業には、基本的に残業代は支払われません。
とはいえ、業務の実態を鑑みて、残業せざるを得ない状況がある場合には、テレワークにおける残業代の不支給を違法として、未払い残業代を会社に請求できる可能性はあります。

そのような場合、従業員が自ら会社と交渉するのは難しいでしょう。
残業に関するトラブルを抱えている場合や未払い残業代を会社に請求したい場合には、労働問題に強い弁護士にご相談ください。法律に基づいた弁護士のサポートを受ければ、労働問題の有利な条件での早期解決を目指すことができます。