教師の残業代について

 教師の過労死について労災が認定されたニュース等もあり、昨今教師については、通常の勤務時間以外にも、モンスターペアレントが問題視されたように保護者への必要以上の対応や、部活の指導等で授業や試験の準備を家に持ち帰ってしなければならない等と、長時間労働を強いられていることについては今や周知の事実です。日本労働組合総連合会が行った調査(2018年10月)によると、50%以上の公立学校の教師が週60時間以上働いているという結果が出ています。これは、50%以上の効率学校の教師が厚生労働省が定める過労死ライン(月80時間以上の時間外労働道)を超えているということであり、事態の深刻さが伝わります。では、これらの時間外労働に対する残業代は、どのように扱われているのでしょうか。今回は公立学校の教師の残業代について説明をしていきたいと思います。

これだけ働いているのに残業代が支給されない?!

 通常の労働者は、労働基準法により、原則として1日8時間、週40時間以上就労した場合については、割増賃金が支給されます。
 しかしながら、公立学校の教師には、教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)が適用されることにより、教職調整額という基本給の4%相当の額が支給されることになっており、また、「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」と定められています。

 この、教職調整額に関する規定は、もともとは、教師に対しても労働基準法の時間外手当の支給に関する規定が適用されるにもかかわらず、時間外手当が支払われてきてこなかったことにより、教師による時間外手当の支給を求めるストライキや訴訟が日本全国で実施され、これに対する解決策として、平均残業時間数月8時間程度に相当する基本給の4%の残業代を支払うという規定が1971年に制定されたものであります。しかしながら、この規定は、約50年前に制定されたものであり、現在の実情とはかけ離れたものとなっています。
 つまり、上記で述べたとおり、教師の業務は、昨今過重傾向にあり、50年前の実態にはそぐわないほど長時間労働を強いられています。
 しかしながら、教職調整額に関する規定があることから、公立学校の教師は残業代請求は認められてきておらず、昨今働き方改革が叫ばれ、労働基準法も改正されている中、公立学校の教師だけ昔の制度のまま取り残されている状態になっています。

いくら残業しても残業代は請求できない?!

 では、残業代が発生しないからといって、公立学校の教師にはいくらでも残業をさせてもいいのでしょうか。
 これについては、教員職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合は、生徒の実習、学校行事、教員会議、非常災害、児童生徒の指導に関し、緊急の措置を必要とする場合等に限る、とされています。つまり、原則としては、教職員を正規の勤務時間を超えて勤務させることはできないとされているということであり、通常の労働者とこの点は同様です。
 しかしながら、実際には公立高校の教師の方々は、こうした例外を除いても多大な業務を抱えており、勤務時間内に業務を終えることは困難であることから、サービス残業や持ち帰り残業をしているのが実情です。
もっとも、判例によると、上記の限定された4項目以外の業務についても、教職調整額のうちに「調整」 されたものと推定し、残業等が命ぜられるに至った経緯、従事した職種の内容、勤務の実態等に照らして、それが当該職員の自由意思を極めて強く拘束されるような形態でなされ、しかも常態化している時間外労働についてのみ割増賃金が支払われる、と判断されています。
この基準により、実際に公立高校の教師が行っている時間外業務は、過去の判例からすると、自由意思を極めて強く拘束するものではないとして、業務命令に基づく時間外労働には該当しないとして、教師が自発的に行ったものと捉えられています。

昨今の動き

上記のように、判例上公立教師の残業代請求はなかなか認められないものとなっています。しかし、特例法の改正を求める署名活動がなされており、文科省の審議において教員の勤務時間の上限を定める等の審議が行われています。また、2018年9月には埼玉県の公立教師による残業代請求訴訟が提起されています。

まとめ

上記のように、公立教師については、特例法の適用により、残業が当該職員の自由意思を極めて強く拘束するような形態と判断されるかによって残業代請求の成否が判断されています。昨今の公立教師の厳しい労働環境に鑑みれば、今後の裁判所の判断に影響が出てくる可能性もあります。そのため昨今の活動がどのように展開され、それが与える影響力について注意深く見守っていく必要があります。

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