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残業代が出ない職種がある?!

労働基準法は、労働時間について原則として、1日8時間、週40時間という上限を定めています。上限時間を超えて労働した時間については残業代が発生することになります。
しかしながら、中にはこの労働基準法の厳格な労働時間に関する定めが適用されず、残業代が請求できない職種があります。
今回は残業代を請求できない職種について説明をしていきたいと思います。

労働基準法の労働時間に関する規定が適用されない場合とは

労働基準法第41条は、労働時間等に関する上記の原則は、以下に定める労働者には適用されないと定めています。

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一  別表第1第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二  事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三  監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

労働基準法 別表第一

6 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植,栽培,採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
7 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産,養蚕又は水産の事業

前述したとおり、労働基準法は原則として労働時間を1日8時間、週40時間と定め(労働基準法第32条)、従業員を1日8時間、週40時間をこえて時間外労働させた場合は25%以上の割増賃金、深夜労働(午後10時~午後5時まで)させた場合は25%以上の割増賃金、休日労働させた場合は35%以上の割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法第37条)。

しかし、上記の労働基準法第41条が定める職種については労働基準法の厳格な労働時間に関する定めが適用されないと規定されているため、上記の割増賃金、いわゆる残業代が発生しないことになります。

「土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植,栽培,採取若しくは伐採の事業その他農林の事業」について

農業は、一般的に、天候などの予測できない自然条件によって影響を受けやすく、また1年のなかで農繁期と農閑期がはっきりしています。また、天気の悪い日や農閑期には、休憩をすることができます。
そのため、労働基準法によって通常の労働者と同様の厳格な労働者の保護を図る必要はないとの理由により、労働基準法による労働時間の定めの適用が除外されています。

したがって、これらの業種の方には残業代が発生しないことになります。しかし、深夜手当(午後10時~午前5時に働いた場合に発生する25%以上の割増賃金)の発生に関する労働基準法の規定の適用は除外されないので、深夜手当は発生します。

もっとも、農業をする方であっても、契約内容によっては上記で説明した労働基準法の労働時間に関する定めを適用しないこととする趣旨が当てはまらないとして、残業代が発生する場合があります。

例えば、農業を行っている事業所の一部で加工や販売を行っている場合に労働時間が8時間を超えた場合は労働基準法の規定が適用されます。
また、8時間の契約の労働者が8時間以上働いた場合はその分の時間給を支払われなければなりません。
そして、賃金を所定労働時間で割った額が最低賃金を下回ってはいけません。

これらのことを踏まえて、残業代が出ないとしてもきちんと賃金が支払われているかどうかを確認しておくと良いでしょう。

「動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産,養蚕又は水産の事業」について

この規定については、労働の対象物が生き物であることが理由となります。
対象が人間ではないこと、自然環境の影響を受けることなど、一般的な業種と同じ労働時間が適さないためです。

だからといって常に長時間労働が許されるわけではなく、繁忙期と閑散期のメリハリをつけるなどして従業員の健康維持に努める必要があります。
また、こちらも農業と同様に深夜労働の割増賃金については適用されます。

事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

監督若しくは管理の地位にある者

監督もしくは管理の地位にある者とは、労働基準法上の管理監督者を意味します。
管理監督者には労働基準法の労働時間に関する規定が適用されないこととされているため、残業代が発生しません。
しかし、会社が管理職として残業代を支給しない扱いをしていたとしても、必ずしも残業代の支給義務がない労働基準法上の管理監督者に該当するとは限りません。

労働基準法上の管理監督者は、時間外労働をさせた場合は残業代の支給をしなければならない、という労働基準法上の原則の例外ですから、厳格に判断がなされます。
会社から管理監督者と位置づけられたとしても、それが労働基準法上の管理監督者とはいえず、実際は残業代の支払い義務がある場合があるのです。

具体的には、労働基準法上の「管理監督者」は、通達により、“労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあり、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限になじまない者をいう(昭和 22年9月13日付発基17号、昭和63年3月14日付け基発150号)”とされており、以下の判断要素によって判断されます。

①事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限が認められていること ②自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること ③一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇が与えられていること

したがって、上記の条件に当てはまらない場合は、使用者側には、通常の労働者に対するのと同様に残業代を支給する義務があります。

労働基準法上の管理監督者に該当する場合は、残業代は出ませんが、深夜手当(午後10時~午前5時に働いた場合に発生する25%以上の割増賃金)の発生に関する労働基準法の定めの適用は除外されませんので、深夜手当は発生します。

管理監督者についての詳細はこちら

機密の事務を取り扱う者

機密の事務を取り扱う者とは、秘書その他職務が経営者または管理の地位にある者の活動と一体不可分であり、厳格な労働時間管理になじまない者を意味します。

機密の事務を取り扱う者に該当するか否かも、管理監督者と同様、次の事情等を踏まえて厳格に判断されます。
①職務内容が機密の事務を取り扱うものであり、職務内容や勤務実態に照らして、経営者又は管理監督者と一体不可分といえる関係にあること
②自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
③一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇が与えられていること

同じ「秘書」という肩書きでも、医療秘書や弁護士秘書、学者秘書等、経営者と一体的な立場になく通常の従業員と同様労働時間を管理されているような場合は、機密の事務を取り扱う者には該当せず、残業代を請求することができます。

機密の事務を取り扱う者に該当する場合も、深夜手当の発生に関する規定の適用は除外されませんので、深夜手当は発生します。

監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

監視労働

監視労働とは、原則として一定部署にあって監視することを本来の業務とし、常態として身体の疲労または精神的緊張の少ない労働のことをいうと解されています(昭和22年9月13日発基第17号,昭和63年3月14日基発150号等)。

監視労働は、通常の労働と比べて性質上労働密度が高くないため、身体の疲労や精神的緊張の観点からして通常の労働者と比べて負担が少ないことから、通常の労働者と同様に厳格に保護をしなくても、労働者保護を趣旨とする労働基準法による労働者の保護という観点から問題がなく、労働基準法による厳格な労働時間の規制を受けないとされています。

監視労働に該当する可能性があるのは、マンションの管理人や守衛、ビルや工場の警備員などのような待機時間が長い監視業務を行う従業員です。
これらの業務を行う方で労働基準監督署長の許可を受けている場合は、残業代は発生しません。
この場合も、深夜手当の発生は除外されないので深夜手当は発生します。

断続的労働

継続的労働とは、定時的な見回り、緊急の文章・電話の収受、非常事態に備えての特機等のための宿直勤務や休日の日直勤務等の、作業時間が長時間続くわけではなく一旦作業して、その後中断して、また時間が経過してから作業が再び発生して、また中断する、といった労働形態のことを指します。

断続的業務も、監視労働と同様の観点から、労働基準法による厳格な労働時間の規制を受けないとされています。
この場合も、深夜手当は発生します。

もっとも、日直や宿直以外の平常業務については、上記のように労働基準法の労働時間に関する規定が除外されません。
平常業務については厳格な労働基準法による労働時間に関する規定の適用があり、1日8時間週40時間を超えて労働した場合は原則として、残業代が発生します。

まとめ

今回は、労働基準法の労働時間の規定の適用がないことから残業代が発生しない職種について説明をさせていただきました。
残業代が発生しない職種は限られています。職種の実態から判断して、労働基準法による厳格な労働時間に関する規定が除外されないケースもあります。
ご自身で判断が難しい場合は、一度専門家に相談されることをお勧めします。