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残業代請求をしている方の中には、税金の処理がどうなるのか気になる方もいるのではないでしょうか。賃金には所得税がかかりますが、では、残業代にはどのような税金がかかるのでしょうか。今回は残業代を受け取る場合にかかる税金について説明をしていきたいと思います。

残業代の性質

結論から申し上げますと、残業代には所得税がかかります
賃金には所得税がかかることはみなさん承知のとおりです。
残業代は労働した分に対する対価であり、賃金であることには変わりがありません。
そのため、残業代を請求して残業代を受け取る場合や、会社が残業代の未払いに気づいて任意に残業代を支払う場合には、本来支払われるべき賃金が支払われていなかっただけですので、賃金を受け取る場合と同様に所得税がかかります。

逆に言うと、後から残業代をもらえば所得税を払わずに済む、となるとちょっとおかしな話になってしまいますよね。

未払い残業代を受け取った場合に確定申告は必要か?

未払い残業代を受け取る場合はどのような形で受け取るかによって確定申告の要否が異なります。

過去の給与として受け取る場合

未払い残業代を過去の給与として受け取る場合は、本来もらうべきだった給与の額が修正されることになります。
過去の給与に未払い残業代を含めて、再計算された金額に対して税金を支払うことになります。
基本的には、会社が源泉徴収票の修正を行って税金を支払い、税金を引かれた未払い残業代を受け取るという形になります。
この場合、確定申告をする必要はありません。

ただし、
・会社員でも年収2,000万円を超える方
・不動産の売買をした方
・副業をしている方
・医療費控除を受けた方
・転職した方
など、自分で確定申告をしているという方は再発行された源泉徴収票を元に自分で確定申告の修正を行い、税金を支払わなければなりません。

一時金として受け取る場合

未払い残業代を「賞与」として受け取る場合があります。
この場合は今年の収入とみなされますので、過去の給与として受け取る場合のように過去に遡って源泉徴収票や確定申告の修正をする必要はありません。
ただし、今年の収入が増えてしまうので、来年の住民税の額が高額になる可能性があります。

未払い残業代を異なる名目で受け取る場合

残業代請求と同時にハラスメントに対する請求を行った場合などに、未払い残業代を「和解金」「慰謝料」「損害賠償金」といった名目で支払われることがあります。

未払い残業代の支払いであれば、その名目がいかなるものであったとしても賃金であることに変わりはありませんので、税金がかかります。
一方で、ハラスメントなど精神的苦痛に対する賠償金であれば、賃金ではありませんので税金がかかることはありません。
しかし、未払いの残業代とあわせてこれらの名目で支払われた場合、残業代部分と賠償金部分が区別できなければ、全体を未払い残業代として税金がかかってしまう可能性があります。

退職金に注意

会社が未払い残業代を一括で支払う場合、退職金として支払うことを提案してくることがありますが、退職金として受け取ることには問題があります。
というのも、退職金は退職後の生活を支える資金という性質から、受け取り日の前日までに「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出すれば退職所得控除を受けることができます。
例えば、勤続年数が20年以下の場合は「勤続年数×40万円」以下であれば非課税となります。

では、実際は賃金であるはずのお金を退職金として非課税にしてしまってはどうでしょうか。いわゆる脱税になってしまうのです。
このことから退職金として受け取ることはおすすめできません。

その他気をつけたい税金など

所得税以外にも社会保険料や雇用保険料などの支払いをしているかと思いますが、それらの修正などは必要なのでしょうか。
また、未払い残業代と一緒に請求した遅延損害金などについて税金はかかるのでしょうか。
こちらもまとめて確認しておきましょう。

社会保険料

賃金の支払いを受けるとき、所得税のほか社会保険料についても控除されて支払われます。では、未払いの残業代の支払いを受けるときには、社会保険料についても修正が必要なのでしょうか?

結論としては、修正は必要ありません。
社会保険料は、固定賃金の平均からその年の金額が決められます。したがって、残業代の有無は社会保険料の計算には関係がなく、未払いの残業代の支払いを受けた場合にも社会保険料は変化しないため、修正の必要がないということです。

雇用保険料

では、雇用保険料についてはどうでしょうか。

雇用保険料についても、会社側に源泉徴収義務がありますので、所得税と同様に本来支払いを受けるべきであった給料支払日ごとに修正をする必要があります。
したがって、会社側がかかる修正をして雇用保険料を控除して支払をしてきた場合はこれに従う必要があります。

遅延損害金

未払いの残業代については、支払いが遅延した日数に応じて年利6%(2020年4月以降に発生するものについては3%)、退職後からは年利14.6%の遅延損害金が発生します。
では遅延損害金を受け取る場合にも所得税が発生するのでしょうか?

遅延損害金は労働の対価ではないため、未払い残業代とは性質が異なります。そのため所得税は発生しません。

ただし、損害遅延金は「雑所得」となりますので、雑所得(収入金額-必要経費)を計算して20万円を越える場合や、年間所得が2,000万円を超える場合など元々確定申告をする必要がある方などは確定申告が必要です。

付加金

裁判の結果次第で「付加金」が支払われることもありますが、こちらも遅延損害金と同じく労働の対価ではないため所得税は発生しません。

また、付加金については「一時所得」となりますので、一時所得(収入金額-必要経費-特別控除(50万円))を計算して20万円を越える場合や、年間所得が2,000万円を超える場合など元々確定申告をする必要がある方などは確定申告が必要です。

まとめ

今回は未払い残業代の支払いを受けた場合の税金の処理について説明をさせて頂きました。
会社に対して残業代請求をしている場合、今回の説明をもとに、どのような形で支払われるかという点についても注意をしていただければと思います。