残業代請求をしている方の中には、税金の処理についてどうなるのかと考えている方もいるのではないでしょうか。賃金には所得税がかかりますが、では、残業代にはどのような税金がかかるのでしょうか。今回は残業代を受け取る場合にかかる税金について説明をしていきたいと思います。

残業代の性質

 結論から申し上げますと、残業代には所得税がかかります。
 賃金には所得税がかかることはみなさん承知のとおりです。残業代は、労働した分に対する対価であり、賃金であることには変わりがありません。すなわち、残業代を請求して、残業代を受け取る場合や、会社が残業代の未払いに気づき、任意に残業代を支払う場合には、残業代つまり未払い賃金とは、本来支払われるべき賃金が支払われていないだけですので、賃金を受け取る場合と同様に所得税がかかります。

所得税を源泉徴収されずに残業代を受け取った場合の処理

 残業代を請求する場合、所得税の控除を考慮せず計算した残業代そのものを請求することが一般かと思います。では、このように残業代請求をして、会社が所得税を源泉徴収せずに残業代を支払ってきた場合はどのように処理すればいいのでしょうか。
 所得税については会社に源泉徴収義務があります。したがって、会社が未払い賃金を従業員に支払う場合は、会社が所得税を徴収して、残った分を従業員に支払わなければなりません。
 会社側が源泉徴収することなく残業代を支払ってきた場合において、従業員が確定申告をしていなかった場合、後に会社が源泉徴収していないことに気づき、源泉徴収分を納税した場合は、会社側からその分を請求される可能性があります。
 

確定申告をするにはどのように計算すればいいのか

上記で説明しましたとおり、残業代の支払いとは、本来支払われるべきであった月に支払われなかった賃金の支払いです。
したがって、残業代が本来支払われるべきであった年よりも後の年に支払われた場合は、支払いを受けた年の給与として換算するのではなく、本来支払われるべきであった年の給与として確定申告をすることになります。
具体的には、給与は支給日が定められていると思います。したがって、毎月の支払日毎に本来支払われるべき未払い賃金を計算して、それらがどの年の1月~12月の給与に含まれるのか計算をして、既に確定申告が済んでいる年の分については、修正申告をすることになります。

残業代を一括で受け取る場合の注意点

 たまに会社側が未払い残業代を一括で支払う場合、退職金として支払うと言ってくる場合があります。退職金として受け取ると、所得税や雇用保険料の点で損をすることになります。未払いの残業代の支払いは、本来支払われるべきであった“賃金”の支払いであり退職金とは性質を異にするものです。したがって、このような提案を受けた場合は、安易に同意をしないように気を付けるべきです。

社会保険料について

 賃金の支払いを受けるとき、所得税のほか社会保険料についても控除されて支払われます。では、未払いの残業代の支払いを受けるときには、社会保険料についても修正が必要なのでしょうか。
 結論としては、修正は必要ありません。社会保険料は、固定賃金の平均からその年の金額が決められます。したがって、残業代の有無は社会保険料の計算には関係がないので、未払いの残業代の支払いを受けた場合にも、社会保険料は変化しないので、修正は必要ありません。

雇用保険料について

 では、雇用保険料についてはどうでしょうか。これについても、会社側に源泉徴収義務があります。したがって、所得税と同様に、本来支払いを受けるべきであった給料支払日ごとに修正をする必要があります。
 したがって、会社側がかかる修正をして雇用保険料を控除して支払をしてきた場合はこれに従う必要があります。

遅延損害金を受け取った場合

 未払いの残業代については、支払いが遅延した日数に応じて年利6%、退職後からは年利14.6%の遅延損害金が発生します。
 これら遅延損害金についても受け取る場合には、所得税が発生するのでしょうか。
 遅延損害金は、労働の対価ではなく、未払い残業代元金とは性質を異にするものです。したがって、所得税は発生しません。

和解金としてまとまったお金を受け取った場合

 残業代請求をして、本来支払われるべき未払い賃金とは異なる金額でその紛争を解決する趣旨で、和解金としてまとまった金額を受け取る場合もあります。
 このように和解金として支払われた場合、給与の修正は行われず、裁判所としても損害賠償として認めたものではないものとなります。したがって、このような支払を受けた場合は、雑所得や一時所得として処理されることになります。

<まとめ>
今回は未払い残業代の支払いを受けた場合の税金の処理について説明をさせて頂きました。会社に対して残業代請求をしている場合、今回の説明をもとに、どのような形で支払われるかという点についても注意をしていただければと思います。

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