残業代を現物支給できる?!

 給与が食事の支給や自社商品を支給するなど,現金ではなくものや権利などで支払われる場合を現物支給と呼びます。
 では、残業代を現物支給することは認められるのでしょうか。
 今回は、給与の性質を含めて説明をしていきたいと思います。

賃金とは

 賃金については、労働基準法において以下のとおり定義されています。
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう(労働基準法11条)。

 残業代は、「労働の対象として使用者が労働者に対して支払うもの」であるため、労働基準法における賃金に該当します。

賃金に関する決まり

 そして、賃金の支払い方法については、以下のとおり労働基準法において定められています。

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる(労働基準法24条1項)。

 したがって、原則として、賃金は、「通貨」で支給されなければならないため、現物支給はできません。
 つまり、残業代を現物支給することも原則として認められていません。

例外

 上記のとおり、労働基準法においては、賃金の通貨による支給の例外が定められています。
具体的には、労働者の同意を得た上で口座振込とする場合、労働者の同意を得た上で銀行振り出しの小切手などで支払う場合、及び、通貨以外の方法で支給する旨の労労使協定をした場合に、賃金を通貨以外の方法で支給することが認められています。

したがって、現在は多くの会社が賃金を銀行振り込みにより支給していますが、これは、賃金の通貨による支給の例外として、認められているものです。

また、仮に“残業代を現物支給する”との労働組合と会社の間(労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者と会社との間)の労使協定があれば、残業代を現物支給することも認められることになります。

したがって、かかる労使協定がないにもかかわらず、会社が一方的に自社製品の家電や食品、車、洋服などを残業代として支払うような現物支給することは労働基準法違反になります。

ボーナスを現物支給することは許されるの?!

 では、ボーナスを現物支給することは認められるのでしょうか。
 ボーナスすなわち、賞与は、賃金と区別して考える必要があります。賞与は、毎月の給与とは別に支払われる特別な報酬です。賞与に関する法的な定めはなく、賞与は法律上当然に支払ってもらえるものではなく、会社が恩恵的に支払うものです。
 したがって、会社がボーナスを現物支給することは原則として認められます。

 もっとも、賞与の支給基準が雇用契約や就業規則に定められている場合は、かかる賞与はその定めのとおり支給されなければなりません。その定めに反する支給方法は、合意違反になります。

 

まとめ

今回は賃金の性質と共に残業代の現物支給が認められるかについて説明をしてきました。残業代が現物支給されている場合は、今回の説明をもとに、雇用契約書、及び就業規則にどのように記載されているか、労使協定が締結されているか、今一度ご確認ください。

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