記事監修

最近「残業代請求」が注目を集めています。
もしかしたら自分も残業代請求できるのではないか、と考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
しかし、実際に残業代を計算しようとしても「何分単位で残業代が請求できるのか分からない」「会社独自の切り捨て、切り上げのルールが決められており、どのように計算をすればいいのか分からない」などのお悩みもあるかと思います。
そこで、今回は残業代を請求できる単位について説明をします。

残業代請求は残業した時間分請求できる

結論から申し上げますと、会社は原則として1分単位で残業代を支払わなければなりません

その根拠として、会社は、労働基準法によって賃金全額を支払うことが義務付けられており(労働基準法24条)、残業代は、会社が従業員に対して残業をさせた場合に支払う割増賃金であることから(労働基準法37条)、会社は残業代についても全額支払うことが義務付けられているためです。

したがって、仮に会社独自のルールで“30分未満は切り捨て”など残業代として換算しないような定めがあったとしても、それは労働基準法に違反することになりますので無効です。

残業時間の基本的な考え方

法定労働時間

労働基準法第32条では労働時間について次のように定めています。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

この

  • 1週間40時間以内
  • 1日8時間以内

の労働時間が「法定労働時間」です。

割増率

法定労働時間を超えて労働させた場合、会社側は25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
また、深夜労働(午後10時~午後5時までの労働)させた場合は25%以上の割増賃金、法定休日労働(1週1日または4週4日の法定休日の労働)させた場合は35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
これらの法定時間外労働や深夜労働及び法定休日労働の合計時間分、割増賃金を請求することができます(労働基準法第37条)。

所定労働時間

所定労働時間とは、会社と労働者との間で交わされた契約によって定められた労働時間のことをいいます。
正社員の場合は一般的に労働時間を8時間としていることが多いと思いますが、所定労働時間を8時間未満で設定している会社もあります。

法定内残業

法定内残業とは「所定労働時間を超えて労働したが、法定労働時間内に行われた労働(残業)」のことを言います。
例えば、所定労働時間が「午前9時〜午後5時(うち休憩1時間)」の契約の人が午前9時〜午後6時まで働いたとすると、7時間の所定労働時間を超えて労働(残業)をしていますが、法定労働時間である8時間は超えていません。
この場合、午後5時〜6時の残業は法定内残業となりますので、割増賃金は発生しないということになります。
ただし、就業規則などによって「所定労働時間を超えて働いた時間について割増賃金を支払う」という旨を定めている会社もありますので、就業規則はきちんと確認しておいたほうが良いでしょう。

法定外残業

もうお分かりだと思いますが、「法定労働時間外に行われた労働(残業)」のことです。
先程の例で午後8時まで残業したとすると、就業規則などに特別の定めがない場合は午後5時〜午後6時までの残業には割増賃金は発生しませんが、午後6時〜午後8時までの残業には25%以上の割増賃金が発生します。

残業代の計算方法

残業代の計算は労働基準法施行規則第19条によって次のように定められています。

法第三十七条第一項の規定による通常の労働時間又は通常の労働日の賃金の計算額は、次の各号の金額に法第三十三条若しくは法第三十六条第一項の規定によつて延長した労働時間数若しくは休日の労働時間数又は午後十時から午前五時(厚生労働大臣が必要であると認める場合には、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時)までの労働時間数を乗じた金額とする。
一 時間によつて定められた賃金については、その金額
二 日によつて定められた賃金については、その金額を一日の所定労働時間数(日によつて所定労働時間数が異る場合には、一週間における一日平均所定労働時間数)で除した金額
三 週によつて定められた賃金については、その金額を週における所定労働時間数(週によつて所定労働時間数が異る場合には、四週間における一週平均所定労働時間数)で除した金額
四 月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異る場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額
五 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
六 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額
七 労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額

例えば時給制のアルバイトであれば、同条第1項1号の「時間によつて定められた賃金については、その金額」が適用されますので、単純に時給×1.25で計算されます。

では、一般的に多い「月給制社員」の場合はどうなるのかというと、同条第1項4号に定められているように、「延長した労働時間数」に「その金額を月における所定労働時間数…で除した金額」…わかりやすく言うと「基本給など労働の対価としての賃金を1か月の所定労働時間で割って計算された1時間あたりの賃金額」を乗じます。
それに法定外残業の場合は1.25を、深夜の法定労働時間の場合は1.5を掛けることになります。

長くなりましたが、残業代の計算式は以下のようになります。

1時間あたりの基礎賃金×残業時間×割増率

具体例

では具体例で計算してみましょう。

  • 所定労働時間 平日10時~19時(月平均所定労働時間:160時間)
  • 休憩 1時間
  • 休日 土日祝日
  • 基礎賃金 25万円
  • 1時間あたりの賃金額 1563円(25万円÷160時間。端数切り上げ。)

この契約で働いている方が、ある日19時から23時まで残業したとします。
19時~22時の間は通常の法定外残業、22時~23時の間は深夜の法定外残業となりますので、
{(1563×3×1.25)+(1563×1×1.5)}=8207円(端数切り上げ)
が、この日の残業代となります。

(残業代の計算方法については、こちらで詳しく解説しています。「残業代の計算方法は?」)

残業代の例外

しかしながら、従業員1人1人について1分単位で残業時間を管理する業務の煩雑性から、例外が行政通達で認められています(昭63・3・14基発第150号)。

行政通達によると、1か月単位の残業時間(1日8時間、週40時間を超えて労働した時間、深夜労働(午後10時~午前5時まで)の時間、休日労働の時間の合計時間)において、1時間未満の端数の時間がある場合には、30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げて計算することが認められています。
また、残業代の計算において、1円未満の端数がある場合には、50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げることが認められています。

つまり、1日単位での切り捨ては認められていませんが、1か月単位で残業代を計算した場合に、30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げて計算することができます。また、1円未満の端数がある場合には、50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げることができます。

そして、切り捨てだけをして切り上げをしないといった、労働者に不利になる扱いは、上記の行政通達に違反することになり、認められません。
もっとも、切り上げだけをして切り捨てをするといった、労働者に有利な取扱いは、上記情勢通達に違反しません。

まとめ

残業代は1分単位で請求することができますが、通達によって切り上げや切り捨てをすることができることがわかりました。
自分の勤務先の残業代の計算方法はきちんと労働基準法や通達に沿ってなされているのかどうか、一度確認なさってみてはいかがでしょうか?

計算方法に納得がいかない場合や残業代請求をしようかと考えている場合は専門家に相談してみることをおすすめします。