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残業代請求には証拠が必要です

仕事が多くて時間内に終わらず「残業」をするといったことは多々あるかと思います。
残業をすると割増賃金が支払われると考えられていますが、「残業」には割増賃金が支払われるものとそうでないものがあることをご存じでしょうか?
この違いは、「法定時間外残業」と「法定時間内残業」の違いによるものです。
今回は、法定時間外残業と法定時間内残業についてまとめましたのでご覧ください。

いろいろな「残業」の呼び方について、その意味を正確に理解しよう

まず「残業」ですが、残業はその性質や企業によって様々な呼び方がされることがあります。例えば以下のようなものがあります。

・時間外労働、超過勤務
法定労働時間(※後述)を超えて働くこと。一般的に言う残業のこと。

・所定内残業
所定労働時間を超えた労働時間(法定内残業)のこと。詳細は後述。

・深夜残業
1日8時間の労働時間を超えて、午後10時から午前5時までの間に行われる残業のこと。例えば午前10時から午後11時まで働いた場合(休憩1時間)、午後7時以降が残業時間となり、そのうち午後10時から11時までが深夜残業となる。賃金は通常の1.5倍となるので、時給1,000円の場合の深夜残業代は1,500円となる。

・みなし残業
あらかじめ残業時間を想定して支払われる残業代のこと。固定残業代とも言う。例えば10時間は残業するだろうと想定して15,000円別途支給されているものがこれに当たる。

・休日労働手当
休日に行った出勤・業務に対して支払われる賃金のこと。
この「休日」が「法定休日」か「法定外休日」かによって休日労働手当に該当するかどうかが異なる。法定休日は「使用者は少なくとも毎週1日、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない」という労働基準法に定められた最低限の休日のこと。法定外休日は会社が定めた休日のことで、例えば土日休みを設定している会社が就業規則で日曜日を法定休日としている場合は土曜日が法定外休日となる。
このケースで日曜日に出勤した場合は休日労働手当(35%以上増の割増賃金)が支給されるが、法定外休日である土曜日に出勤した場合は、休日労働手当は支給されないということになる。ただし休日労働手当は発生しなくても法定労働時間である「週40時間」を超過した部分については割増賃金が発生する。

これらはよく耳にする残業の種類なのではないでしょうか。

このように様々な種類の「残業」があるわけですが、なぜ割増賃金が支払われる残業とそうでない残業があるのでしょうか?
それは世間一般に言われている「残業」には「法定外残業」と「法定内残業」に分かれており、どちらに該当するかによって割増賃金になるか否かが決まるからです。

法定時間外残業と法定時間内残業とは

では、なぜ同じ「残業」なのに「法定時間外残業」と「法定時間内残業」といった二種類に区別されるのでしょうか。これを理解するためには、「法定労働時間」と「所定労働時間」について知っておく必要があります。

まず「法定労働時間」についてですが、労働基準法第32条によって、1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならないと定められています。これが法律によって定められた「法定労働時間」です。
これに対して「所定労働時間」は会社が法定労働時間を超えない範囲で定める労働時間のことをいいます。

例えば、就業規則や雇用契約書には“勤務時間は9時~18時(休憩12時~13時)、休日は土日祝日”とか“所定労働時間は1日6時間以内または週30時間以内”といった記載がされています。
このように「所定労働時間」は会社が法定労働時間を超えない範囲で定める労働時間であるため、必ずしも「法定労働時間」=「所定労働時間」とはなるわけではありません。

仮に“勤務時間は9時~17時(休憩時間12時~13時)、休日は土日祝日”と定めている会社があるとします。
この場合に9時~18時(休憩1時間)まで働いたとすると、1日8時間働いたことになりますので、法定労働時間(1日8時間)の範囲内となります。
そのため、17時~18時の労働時間は、法定労働時間の範囲内なので、「法定時間内残業(法内残業)」にあたります。
これに対して、9時~19時(休憩1時間)まで働いた場合はどうでしょうか。この場合は、1日9時間働いており、18時~19時間の労働は、法定労働時間(1日8時間)の範囲を超えるものなので「法定時間外残業(法外残業)」となります。

以上のとおり、
・法定時間外残業とは:法定労働時間を超える労働時間(残業)
・法定時間内残業とは:所定労働時間を超えるが法定労働時間の範囲内の労働時間(残業)
ということです。

もうおわかりだと思いますが、割増賃金が発生する残業は「法定時間外残業」となります。
法定時間外残業を行った場合は25%以上増の割増賃金が支給されます。

以下、具体例をもとに図を作成しましたのでご参照ください。

・所定労働時間:1日7時間、休日:土日祝日
・月曜日に7時間、火曜日に8時間、水曜日・木曜日に9時間、金曜日に7時間、土曜日に6時間、日曜日に3時間労働した


この場合、火曜日は1時間法定内残業をしたことになります。
水・木曜日は、1時間法定内残業、1時間法定外残業をしたことになります。
土曜日は、月~金まで所定労働時間の合計35時間、法定労働しており、火・水・木で法定内残業を3時間しているため、合計38時間の法定時間内労働をしています。したがって、週に40時間という法定労働時間に足りない2時間分が法定内残業となり、週40時間を超える4時間分が法定外残業となります。この4時間分が割増賃金となります。

所定労働時間が1ヶ月や1年の単位で変化するケース

所定労働時間が1ヶ月や1年の単位で変化するケースもあります。
それが「変形労働時間制」です。
変形労働時間制は労働時間を1ヶ月や1年単位で調整して法定労働時間内に収まるよう(時間外労働の取り扱いにならないようにする)にする制度です。この場合も法定労働時間内で働くことが原則です。
どういった制度なのか確認しておきましょう。

・1ヶ月単位の変形労働時間制の場合
月ごとの法定労働時間の上限は次のように定められています。(労働基準法第32条の2、労働基準法施行規則第12条の2の2)

月の日数 法定労働時間の上限
28日 160.0時間
29日 165.7時間
30日 171.4時間
31日 177.1時間

※上限は40時間(法定労働時間)×月の日数÷7で計算されます。
この範囲内で繁忙期と閑散期の労働時間を調整します。

例えば
・1日~24日は1日7時間勤務
・25日~月末は1日10時間勤務(繁忙期)
・午前9時から勤務開始
・土日休み
といった就業規則の会社があったとします。
労働時間を計算する月が4月で1日が月曜日スタートだった場合、1日~24日の勤務時間は7時間×18日で126時間、25日~30日の勤務時間は10時間×40日で40時間。合計166時間となりますので法定労働時間の上限内に収まります。
そして1ヶ月単位の週の平均労働時間が40時間以内となっていれば良いとなっていますので、この場合25日以降に10時間労働したからと言って時間外労働とはならないということになります。

ではどの範囲に残業代が発生するのかと言うことになりますが、1ヶ月単位の変形労働時間制の場合は1日の労働時間が8時間を超えた場合(1日の所定労働時間が8時間以上で設定されている場合はそれを超える場合)、週の労働時間が40時間を超えた場合(週の所定労働時間が40時間以上で設定されている場合はそれを超える場合)となります。

・1年単位の変形労働時間制の場合
1年単位の変形労働時間制は1ヶ月以上1年未満の期間内で労働時間を調整する制度です。
繁忙期と閑散期がある会社などで採用されることが多く、繁忙期に勤務時間を長くしたい、6日連続勤務してほしいといった使われ方をします。

だからといって丸々ひと月働かせるなどという過酷な使われ方がされないように、きちんと次のような基準が設けられています。(労働基準法第32条の4、労働基準法施行規則第12条の4)

年間法定労働時間 2085.7時間(365日)

2091.4時間(366日)

年間労働日数 280日
年間休日 85日
1日あたりの労働時間 10時間まで
1週間あたりの労働時間 52時間まで
連続勤務可能日数(原則) 6日まで

(特例が適用される場合は連続最大12日(週1回休み))

1年単位の変形労働時間制も1年間の勤務時間が法定労働時間内に収まるように設定しなければなりません。
また、労使協定を結び、労働基準監督署に提出しなければ1年単位の変形労働時間制を採用することはできません。

なお残業代の発生要件は1ヶ月単位の変形労働時間制と変わりありません。

時間外手当と残業手当の違い

時間外に働いた場合の手当は「時間外手当」や「残業手当」と言われます。
その内容に違いがあるのかという点ですが、
・時間外手当…法定時間外労働に対する割増賃金のこと
・残業手当…所定労働時間を超えて働いた部分に対して支払われる賃金または法定時間外労働に対する割増賃金のこと
となっていますので、「残業手当=時間外手当もひっくるめた言い方」ということだと解釈されます。実際に残業手当のことを時間外手当と呼ぶこともあります。職場によっては超過勤務手当と呼ばれることもあり、呼び方は様々ですので、どの手当のことを指しているのか、きちんと確認する方がいいでしょう。

まとめ

以上、法定時間外残業と法定時間内残業について説明をさせていただきました。こちらを理解して頂いた上で、実際の労働時間から考えると支払われている残業代が見合わないということはないでしょうか。
最近は、固定残業代として、あらかじめ残業時間を想定して残業代が支払われているケースが多々あります。しかし、実際の労働時間から考えると固定残業代が見合わない場合は、実際の残業代を請求できる場合もあります。少しでも疑問に感じることがあれば、一度ご相談ください。