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残業代の計算方法を正しく理解しましょう

給与明細を見ると残業代がついているけど、「実際のところどのように計算されているか知らない…」という方も多いのではないでしょうか。
残業代がどのように計算して支払われているのかを知って、残業代がきちんと支払われているか確認できるようにしてみましょう!

残業代の求め方

ではまず残業代の計算方法についてみていきましょう。
通常の勤務形態の場合、残業代は次の計算式によって算定されます。
            基礎賃金
残業代= ――――――――――― ×割増率
        1か月の所定労働時間

計算式の中に含まれる「基礎賃金」と「割増率」については以下の通りです。

基礎賃金

基礎賃金とは1か月あたりの労働の対価に該当するもので、基本給と諸手当の合計のことを指します。
ただし、労働の対価とはならない次の諸手当については基礎賃金から除かれます。
・家族手当
・扶養手当
・子女教育手当
・通勤手当
・別居手当
・単身赴任手当
・住宅手当
・臨時手当(賞与、結婚手当、出産手当など)

残業代を計算する場合は基礎賃金を1ヶ月の所定労働時間で割り、1時間あたりの基礎賃金を計算します。それに割増率をかけて時間あたりの残業代を計算することになります。
例えば基礎賃金が20万円(家族手当などを除いた額)、1ヶ月の所定労働時間が160時間(8時間×20日)だった場合は1時間あたりの基礎賃金が1,250円となります。

残業をした場合はこれに割増率をかけて計算します。

1か月の所定労働時間

労働者には雇用契約や就業規則によって1日あたりの勤務時間や休日が定められています。これを所定労働時間といいます。
月によって日数や土日の数が異なるため1か月間の所定労働時間は毎月異なりますので、1か月間の所定労働時間は1年間の平均から求めることになります。

例えば2020年の1年間の所定労働日数は241日ですので、1年間の所定労働時間は1,928時間(8時間×241日)となります。
したがって、2020年の1か月あたりの所定労働時間は、1,928時間÷12か月=約160時間となります。

割増率

法定労働時間(1日8時間、1週間40時間を超えて労働させてはいけないという原則など)を超えて労働をしたり、深夜労働をしたりと条件を満たした場合には基礎賃金を割り増しした「割増賃金」が支払われます。割増賃金の計算をする際に使用するのが労働基準法第37条によって定められた「割増率」です。

割増率は以下の通りです。
・時間外労働(法定労働時間を超えた場合):25%割増
・時間外労働(1ヵ月60時間を超えた場合):50%割増
・深夜労働(午後10時から午前5時までに労働した場合):25%割増
・休日労働(法定休日に労働した場合):35%割増

要件が重なる場合は次のようになります。
・時間外労働(法定労働時間を超えた場合)をした場合でそれが深夜労働の場合:50%割増
・時間外労働(1ヵ月60時間を超えた場合)をした場合でそれが深夜労働の場合:75%割増
・休日労働をした場合でそれが深夜労働の場合:60%割増

※雇用契約や就業規則で上記より高い割増率が定められていた場合は、雇用契約や就業規則で定められている割増率になります。

先ほどの例で、時間外残業を2時間した場合は1,250円×1.25×2で3,125円の残業代が出るという計算になります。

時間外労働

では時間外労働(=残業)がどういった場合に当てはまるのかというと、判例によると次のような判断がなされています

・1日について
①所定労働時間(労働者と会社との間で交わした契約によって定められた労働時間)が8時間より長い場合はその所定労働時間を超えたとき
②所定労働時間が8時間以内の場合は8時間を超えたとき

・1週間について
①所定労働時間が40時間を超える場合はその所定労働時間を超えたとき
②所定労働時間が40時間時間以内の場合は40時間を超えたとき

・変形期間(1ヶ月、1年など)について
労働時間がその期間の日数÷7×週法定労働時間(40時間)を超えたとき

これらに当てはまる場合は時間外労働となり時間外手当の対象となります。

時間外労働が月60時間を超える場合

時間外労働時間が1か月あたり60時間以上超えた場合、その60時間を超えた部分の残業についての割増率は50%になります。

ただし次の中小企業に該当する場合は、月の残業時間が60時間を超えても50%増にはなりません。
・小売業者で資本金5000万円以下、または常時使用する労働者50人以下
・サービス業で資本金5000万円以下、または常時使用する労働者100人以下
・卸売業で資本金1億円以下、または常時使用する労働者100人以下
・その他の事業で資本金3億円以下、または常時使用する労働者300人以下
※この中小企業の猶予については2023年4月1日から廃止されます。

休日労働とは

労働基準法によって労働者には1週間に1日(または4週間に4日)の休日を与えなければならないと定めており、就業規則などにきちんと記載されています。
この休日を法定休日と言い、法定休日に労働した場合は前述したとおり35%の割増賃金が支払われます。
多くの会社で土日休みが採用されているかと思いますが、土日のうちどちらか1日が法定休日になり、残り1日の休日は通常の勤務日における労働と同様に扱われることになりますので休日労働には該当しません。
例えば日曜日が法定休日の場合に土曜日に出勤したとしても休日労働手当はもらえないというわけです。もちろん時間外労働に当たる労働時間があれば時間外手当はもらえます。

具体例で計算をしてみましょう

ここまでの内容を元に具体例で計算してみましょう。
勤務時間が平日9時から18時(休憩1時間)、休日は土日祝日で、基本給23万円、住宅手当3万円の契約で働く労働者が、ひと月のうち特定の1週間の平日だけ9時から22時まで勤務(4時間残業)した場合、残業代はどのように計算すればよいのでしょうか。

・基礎賃金
住宅手当は基礎賃金から除外されるため、基礎賃金は基本給23万円です。

・1ヶ月の所定労働時間
2020年の場合160時間です。

・割増率
休日労働手当や深夜手当などは該当しないため、時間外労働手当の25%増が該当します。

・残業代
これらを踏まえて1時間当たりの割増賃金は、23万円÷160時間×1.25=約1796円と計算されます。
この労働者のひと月の残業代は1796円×4時間×5日=35,920円ということになります。

変形労働時間制の残業代計算方法

繁忙日や繁忙期に合わせて1日の労働時間を変動させるなどして、労働時間を月や年単位で計算する企業もあります。この制度を「変形労働時間制」と言います。
1日の労働時間が8時間と決まっていれば計算は簡単ですが、変形労働時間制の場合の残業代はどうやって計算すれば良いのか悩むこともあるのではないでしょうか。

変形労働時間制の代表的な種類としては以下の3つが挙げられます。
・1ヶ月単位の変形労働時間制
・1年単位の変形労働時間制
・1週間単位の変形労働時間制
・フレックスタイム制

それぞれの残業代の計算方法について確認していきましょう。

1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月単位の変形労働時間制とは、1ヶ月の労働時間を平均して週の労働時間が40時間以内(医療機関など特例が適用される場合は44時間)になるように所定労働時間を設定できる制度で、特定の日に法定労働時間を超える所定労働時間を設定できます。
例えば所定労働時間が8時間勤務で毎月月末が繁忙期だった場合、「1日から24日までの就業時間は午前9時から午後5時まで(7時間)、25日から月末までの就業時間は午前8時から午後7時まで(10時間)とする」などといった契約で働く場合がこの制度に当てはまります。

1ヶ月単位の変形労働時間制の残業代は以下のように計算されます。
・日の基準:所定労働時間を超えて働いた部分
(ただし所定労働時間が8時間以内の場合は8時間を超えた部分)

・週の基準:週の所定労働時間が40時間(44時間)を超えた部分
(ただし日の基準で残業となった時間を除く)

・月の基準:月ごとの法定労働時間(※)を超えた部分
(ただし日の基準や週の基準で残業となった時間を除く)
(※月ごとの法定労働時間は、週40時間の所定労働時間の場合は月の日数が30日の場合171.4時間、31日の場合177.1時間と定められています。)

1年単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制は、1ヶ月単位の変形労働時間制の1年版のような制度です。例えば盆正月などが繁忙期の会社がその期間の所定労働時間を増やして閑散期の所定労働時間を減らすなどといった内容です。
1年単位の変形労働時間制の残業代の計算は1ヶ月の所定労働時間とほとんど同じですが、月の基準は次のように変わります。

・月の基準⇨1年間の法定労働時間(※)を超えた部分
(ただし日の基準や週の基準で残業となった時間を除く)
(※1年間の法定労働時間は、週40時間の所定労働時間の場合は2085時間(閏年は2091時間)となります。)

1週間単位の変形労働時間制

1週間単位の変形労働時間制は、週単位で所定労働時間を調整する制度です。
旅館や飲食店など、曜日によって偏りが大きい職種で採用されることが多いようです。
週全体で残業代を計算しますので、日の基準や週の基準を超えた場合に残業代が発生します。

フレックスタイム制

まずフレックスタイム制とは労働者が自分で始業や就業の時間を自由に決めることができる働き方のことを指します。例えば予定があるから月曜日は3時間だけ、まとめて仕事をしたいから火曜日は10時間…というような働き方ができるというわけです。
自らが働き方を決めることから残業代が出ないと思っている方も多いようですが、フレックスタイム制を採用している場合でも残業代は発生します。

労働者の裁量で働くことができるのがフレックスタイム制ですので、法定労働時間にこだわらず1日8時間、週40時間を超えて働くことができるのは確かです。
ただしフレックスタイム制は「精算期間」というものがあります。精算期間は1ヶ月以内の期間で総労働時間は1週間の平均が40時間(44時間)を超えない範囲で設定しなければなりません。例えば「総所定労働時間は160時間」といった内容で契約されているはずです。

実労働時間が総所定労働時間を超えて働いた場合は、残業代が発生するということになります。
仮に時給1,200円で8月に200時間働いたとしたら、
・8月の法定労働時間=(31日の場合)177.1時間
・8月の実労働時間=200時間
・8月の残業時間=22.9時間

・法定内残業:177.1時間-160時間=17.1時間
・法定外残業:22.9時間-17.1時間=5.8時間(時間外手当に該当)

・8月の残業代
(1,200×17.1)+(1,200×5.8×1.25)
=29,220円

という計算になります。

逆に実労働時間が総所定労働時間を超えなかった場合はどうなるのかというと、余った労働時間分を翌月に繰り越すことができます。(実労働時間が総所定労働時間を超えたとしても繰り越すことはできません。)
例えば7月の総所定労働時間が160時間で実労働時間が155時間だったという場合は余った5時間分を8月に残業して相殺することができるということになります。

まとめ

以上、残業代の計算方法を紹介しました。
実際に支払われている残業代が違うのではないかと疑問に思った際は社会保険労務士や弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。