相談者の方からよく聞かれる質問として「出退勤時間のメモがあれば,勝てますか?」というものがあります。

出退勤のメモが,労働時間の証拠として十分か,という質問については,「証拠にはなりますが,それだけですべてが立証できるかは分かりません。最終的には,事件全体を考慮して裁判官が判断することになります。」というお答えしかできません。

ある証拠があった場合に,その証拠からどのような事実を導き出すかは,裁判官の判断によるものであり(自由心証主義,というものです),やってみるまでは分からないのです。
ただ,メモはあくまで労働者が自分で作成できるものですので,証拠としての価値には限度があります。メモ一本での立証に頼るのではなく,パソコンのログデータをこまめにとる,アプリなどを使ってGPSのログを保存する,などより客観的な証拠と併せての補強材料としてお考えください。

同じメモでも,証拠として評価されやすいものもあれば,証拠としての価値が低いものもあります。
そこで,メモを作成するときには,以下の点に気を付けてください。

1. 手帳のカレンダーなどに手書きでメモを残す

エクセル入力などでメモを残す方もいらっしゃいますが,データはいつでも作れますし,改ざんも容易なものです。後からまとめて適当に作ったメモとの区別がつかないので,証拠としての価値は低くなってしまうのです。

2. 毎日メモを残す

気が向いたときだけのメモでは,業務の全体像がつかめませんし,たまたま遅く残った日だけメモをしたのだと思われ,信用性も低くなります。

3. 長期間メモを残す

残業代は2年間遡って請求できることになります。(詳しくは,残業代の時効は2年をご確認下さい。)
理想的には,その2年分すべてについてメモが残っているのが望ましいでしょう。月によって繁閑があるような会社であれば,長期間のメモがないと業務の状況をうまく立証できないことにもなるので,なるべく長期間継続的にメモを残すのが望ましいです。

4. 当日または翌日にメモを残す

1週間分の退勤時間をまとめてメモに記載していた,というのでは,信用性は低くなります。メモは,当日または翌日に残す必要があります。1週間分が,同じペンで記載されたメモよりも,毎日異なるペンや字体で記載されたメモの方がよりリアルな印象を与えるでしょう。

5. 業務内容なども残す

機械的に,出退勤の時間のみを記載したメモよりも,当日のスケジュールや残業した理由なども一緒に残したものの方が,全体としての信用性は高まり,証拠としての価値が高いものになります。

この記事を読んだ人は、以下の記事も読んでいます