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雇用契約書がないのは違法か?

雇用契約書とは、労働者と使用者が雇用契約を結ぶ際に合意した内容を記載した書面です。主な内容として、雇用期間や就業場所、業務内容、労働時間、休憩時間、賃金、休日、休暇などが記載されています。

労働契約法第6条により

「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」

とされています。
労働契約は労働者と使用者の合意があれば成立するということですので、書面が無く口頭による合意でも契約は成立するということになります。
そのため、雇用契約書がなくても違法にはならないということになります。

雇用契約書と労働条件通知書の違い

一方、労働条件通知書は、労働基準法第15条を根拠にして作成される書類です。
労働基準法第15条1項には次のように記載されています。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

労働条件通知書については、「明示しなければならない」とされていますので、必ず作成しなければならないということになります。
労働条件通知書が無い場合は労働基準法違反となり、30万円以下の罰金に処されます(同法第120条)。

労働条件通知書には以下のような内容を記載することとされています(労働基準法施行規則第5条)。

【必ず明示しなければならないこと】

  1. 契約期間に関すること
  2. 期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
  3. 就業場所、従事する業務に関すること
  4. 始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
  5. 賃金の決定方法、支払時期に関すること
  6. 退職に関すること(解雇の事由を含む)
  7. 昇給に関すること

※1~6に関しては原則書面で交付しなければならない。

【定めをした場合に明示しなければならないこと】

  1. 退職手当に関すること
  2. 賞与などに関すること
  3. 食費、作業用品などの負担に関すること
  4. 安全衛生に関すること
  5. 職業訓練に関すること
  6. 災害補償などに関すること
  7. 表彰や制裁に関すること
  8. 休職に関すること

記載される内容としては雇用契約書も労働条件通知書も変わりありませんが、労働条件通知書は会社から労働者に対して一方的に意向(労働条件)について伝える書面、雇用契約書は会社と労働者双方の意向(合意)を伝える書類ということになります。
労働基準関連法の義務を果たすと同時に労働者と使用者の合意を記録に残すために「労働条件通知書兼雇用契約書」として2つの書類をまとめている会社も多くあります。
また、正社員だけでなくパートタイマーやアルバイト、派遣労働者にも交付されるものです。

労働条件通知書をもらうタイミングはいつ?

労働条件通知書の交付について、労働基準法第15条1項には「労働契約の締結に際し」と定められていますが具体的な日にちは記載されていませんそのため、契約が開始する「入社日」までにもらうことになります。
しかし、入社する当日まで契約内容がわからないとなると困りますし、不安にもなるため、内定後~入社日の間に労働条件通知書を交付することが多いようです
具体的な日にちが決まっていない以上、入社日当日に交付する会社もありますので、入社までに労働条件通知書の内容を確認しておきたい場合は、内定が決まった際に労働条件通知書の交付を依頼しておいたほうが良いでしょう。
なお、労働条件通知書と雇用契約書が別になっており、雇用契約書が交付してもらえないという場合は会社に交付を依頼してみましょう。
前述したとおり、雇用契約書は労働条件通知書と異なり交付は義務づけられたものではありませんが、双方の合意があったことを確認するための重要な書類となっています。後にトラブルが発生しないように、交付してもらっておいたほうが良いでしょう。

雇用契約書(労働条件通知書)をもらったらチェックすべき4つのポイント

ここからは、雇用契約書(労働条件通知書)の内容でチェックすべき4つのポイントについて確認していきましょう。

  1. 契約期間
    パートタイムや派遣労働者など、雇用期間が設けられている場合は契約期間や契約更新の有無などを確認することが大切です。また、試用期間は長くても1年程度ですので、1年を超えるような試用期間が定められている契約については少し気を付けた方がよいと思います。
  2. 就業場所、業務内容
    事業所の場所や転勤の有無、配属先、業務内容を確認しましょう。
  3. 始業・終業時刻、休憩、休日
    就業規則をもとに始業・終業の時刻は定められますが、シフト制など必ずしも始業・終業の時刻が一定ではないケースや、深夜労働が含まれるケースなどがありますのでよく確認しておきましょう。休憩・休日については労働基準法によって取得方法が定められています。
    休憩については、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも60分、労働時間の途中に与えることとされています。
    休日については、少なくとも週1日(月4日以上)与えることとされています(法定休日と言います)。

    また、有給休暇については入社から起算して6ヶ月間継続勤務(全労働日の8割以上出勤)した労働者には10日の有給休暇が与えられます。有給休暇は労働基準法によって与えられる権利となりますので、仮に記載されていなくても取得することができます。

    (就業規則と雇用契約書の内容が異なる場合については、こちらで解説しています。「就業規則と雇用契約書の内容が異なる場合、どちらが優先される?」

  4. 賃金
    まず、最低賃金法によって地域ごとの「最低賃金額」が設定されています。
    例えば「固定残業代」として残業代を支払うことで給料をかさ増しして見せることで、まるで多く給料をもらえるように見せかける会社がありますが、固定残業代などを除いた月給(毎月固定で支払われるべき給料)で計算をすると最低賃金額を下回るというケースがあります。
    また、法定労働時間を超えて残業をした場合には残業代として割増賃金が支払われるのですが、割増賃金額が労働基準法で定められた割増率(1.25から1.5倍)を下回っているケースもあります。
    これらは違法ですので、賃金額も労働基準法の範囲内となっているかどうかきちんと確認しておくことが大切です。
    (最低賃金については、こちらで詳しく解説しています。「最低賃金の計算方法|事例付きで分かりやすく解説」
    (固定残業代については、こちらで詳しく解説しています。「固定残業代(みなし残業代)を超えた残業代は請求できます。」

雇用契約書(労働条件通知書)がない場合に起こりうるトラブル

入社する前に雇用契約書(労働条件通知書)をチェックすることができれば、実際の労働条件を確認することができますので、就職後に『条件が違う』というトラブルを避けることができます。
一方、確認できなかった場合には次のようなトラブルが発生する可能性があります。

  1. 求人票や労働条件通知書と実際の労働条件が異なる
    求人票の条件を見て入社を決めたのに、実際に働いてみると求人票の内容と大きくかけ離れていたというのは労働契約において起こりやすいトラブルです。
    前述した「固定残業代」の悪用など、労働者を集めるためにわざと求人票の内容を実際よりも良い内容で記載するという悪質なケースは少なくありません。
    ただし、あくまで求人票は労働条件の見込みとなりますので、求人票と実際の労働条件が異なるからといって必ずしも違法になるとは限りません。
    求人票の内容を鵜呑みにせずに、労働条件通知書をしっかり読んでから就職をすることが大切です。
  2. 試用期間の認識が異なる
    自分が思っていたよりもずいぶんと給料が安かったので確認をしたところ『試用期間なので給与が低い』と言われたというケースがあります。
    試用期間があるのか、どのくらいの期間なのか、また試用期間中の給与はいくらなのかを必ず確認するようにしましょう。試用期間が定められている場合も、労働条件通知書などに必ず記載されています。

これらのトラブルを回避するために、就職する前には必ず雇用契約書(労働条件通知書)をもらって確認することが大切です。

雇用契約書(労働条件通知書)がない場合の対処法

会社に言ってみる

前述したとおり、労働条件通知書がないことは違法となりますので、会社に発行するように依頼してみましょう。雇用契約書も労働者・使用者双方の合意を確認できると同時に、トラブルを回避するためには重要な書類となりますので、取得しておきたいところです。こちらも、まずは会社に依頼してみましょう。
労働基準法第15条によって労働条件については明示しなければならないとされていますので、通常は発行してもらえるはずです。

労働基準監督署に相談する

依頼をしても発行してもらえない場合は、後々労働問題につながる可能性があります。そうなった場合は、労働基準監督署に相談する方法があります。
労働基準監督署では労働相談を受けてくれますので、そこで問題があると確認された場合は会社に対して勧告などを行ってくれます。

弁護士に相談する

それでも解決しない場合は、弁護士など法律の専門家に相談してみましょう。労働契約について起こっているトラブルについてアドバイスをくれたり、トラブルについての対処も行ったりしてくれます。
会社に言ってもどうにもならなかった場合やトラブルが起こっている場合など、まずは一度気軽に弁護士に相談をしてみてはいかがでしょうか。

まとめ – 問題が起こる前に対処する

雇用契約書を読み、疑問に感じたことがあればすぐに会社に問い合わせてください。
法律的な疑問があれば、弁護士に相談するのもひとつの手です。問題が起こってからでは対処に時間も手間もかかってしまいますので、雇用契約書などを読んでみてトラブルが考えられる場合は事前に回避するようにしましょう。

監修弁護士

勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
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