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みなさんは会社の就業規則を確認したことはありますか?
「雇用契約書に労働要件が記載されているから、就業規則までは見たことがない」という方も多いのではないでしょうか。

しかし、実際に就業規則を確認してみると、雇用契約書と内容が異なっているということも少なくはありません。
では、就業規則と雇用契約書の内容が異なる場合、いったいどちらが優先されるのでしょうか。
就業規則と雇用契約書について改めて確認していきましょう。

就業規則と雇用契約書の違い

就業規則とは

就業規則は、労働基準法に基づいて労働条件やルールなどを定めた、会社と従業員全員が遵守すべき「会社の規則」です。

労働基準法の第9章(第89条~93条)にその詳細が定められており、主な内容としては第89条の「作成及び届出の義務」で、次のように定められています。

●常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し労働基準監督署に届け出なければならない

●主な記載事項は以下の通り
【絶対的記載事項】(絶対に記載しなければならない内容)
・始業、終業の時刻
・休憩時間
・休日、休暇
・賃金や昇級に関する事項(計算方法、支払い方法等)
・退職に関する事項

【相対的記載事項】(定める場合には必ず記載しなければならない内容)
・退職手当に関する事項
・臨時賃金に関する事項
・最低賃金額
・労働者の負担事項
・安全、衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償や傷病扶助に関する事項
・表彰や制裁に関する事項
・その他全従業員に適用する定め(休職、出張手当など) など

雇用契約書とは

一方、雇用契約書は会社と従業員個人の間で交わされる労働契約の内容を定めた書面です。

口頭でも雇用契約は成立するため、必ずしも書面を作成する必要はありませんが、労使間で確認して合意した労働条件を明確にするため、就職後に認識の違いによるトラブルを起こさないようにするため作成されることが多いでしょう。

2通作成し、それぞれに互いの署名押印をして保管するのが一般的です。

主な記載内容は以下の通りです。
・労働契約期間
・就業する場所
・業務の内容
・就業時間(始業から終業までの時間)、休憩時間
・残業の有無
・休日、休暇
・賃金に関する事項(決定、計算・支払方法、締切・支払日など)
・昇給や退職に関する事項

就業規則と雇用契約書の違い

会社と従業員全体の間で交わされる統一的な労働契約を定めたものが就業規則、会社と従業員個人が交わす個別の労働契約を定めたものが雇用契約書ということになります。

就業規則と雇用契約書の内容が異なる場合の優先順位

では、就業規則と雇用契約書の内容が異なる場合は、どうなるのでしょうか。
結論を先に言うと「労働者に有利な内容を優先する」ということになります。

労働契約法第12条には

「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」

と定めています。

そのため、交わした雇用契約書の内容が就業規則より不利なものだったとして、使用者側が『契約書にサインしたのだから雇用契約書のとおりに働いてもらう』といっても認められません。
無効となった部分は就業規則で定める基準まで引き上げられますので、労働者は就業規則と雇用契約書、いずれかの有利な内容を主張することができるのです。

また、就業規則や雇用契約書よりも優先される(違反してはならない)のが労働基準法です。労働基準法について以下に解説していきます。

労働基準法とは

労働基準法は、憲法の要請を受け、労働者を守るために規定された法律です。
この法律は、従来労働者が劣悪な環境で働くことを強いられてきたという歴史的な経緯により制定されました。

そのため、労働基準法は労働契約の基本原則とともに、守らなければならない最低基準として、割増賃金の規定や就業規則の作成方法などについて具体的に定められています。
使用者が労働基準法に違反すると行政官庁から指導を受けたり、罰金を科せられたりします。

そして、労働基準法第13条には次のように定められています。

この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。

この条文によって、労働基準法が強行法規であることがわかります。
強行法規とは、当事者間の合意の如何を問わずに適用される規定のことです。
仮に労働基準法以下の労働条件で労使間が合意したとしても、その合意は無効となります。
労働基準法は労働者の保護の役目を持っているため、最低基準を下回ることはできないのです。

例えば、残業代について「法定労働時間(1日8時間)を超える部分については、1割増の賃金を支払う」という労働契約が労使間の合意により締結されていたとします。
しかし、労働基準法第37条によって法定労働時間を超えた残業時間については1.25倍割増しの賃金を支払うことが定められていますので、この契約は無効となり、労働基準法が定める1.25倍に引き上げられるということになります。

このように、労働基準法は労働者を守るための強力な法律なのです。
労働契約を結ぶ際は、労働基準法の基準を下回っていないかきちんと確認しておくことが大切です。

まとめ – 「おかしいな」と思ったら

就業規則と雇用契約書を確認し、雇用契約書の方が悪条件であれば、使用者に対しこれを直すよう求めることができます。
労働基準法を下回っている場合には、労働基準法の基準を下回らないよう求めることができます。

このような請求はもちろん自分自身で行うことができますが、請求したことによって嫌がらせを受けるなど職場環境が悪くなることを懸念して言い出せない方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合は、弁護士を積極的に活用して自分の権利を主張することをおすすめします。

監修弁護士

勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
残業代はその給料日より2年経過すると時効となります。ですので毎月毎月、2年前の残業代が時効となってしまいます。
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