記事監修

歓送迎会の時期や年末になってくると、飲み会やイベントが増えてくる会社も多いでしょう。
しかし、「お金も時間もかかるから、会社から強制される飲み会にはできれば出席したくない」という方もいます。特に若い方にこの傾向があるのは度々メディアなどでも取り上げられていますね。
そこでこんな考えが生まれます。「飲み会やイベントが会社から強制されるのであれば、業務の一環として残業代が支払われるのでは?」
果たして、残業代は支払われるのでしょうか?

そもそも会社の飲み会に強制参加させられるのは違法か?

では会社の飲み会に強制的に参加させられること自体が違法となるのかどうかについて確認しておきましょう。

就業時間内に行われる場合

社内行事として就業時間内に社員旅行や飲み会が行われることがあります。
就業時間内であれば雇用契約に基づく「業務命令」として飲み会に強制参加させることが可能だと考えられますので、就業時間内の飲み会であれば直ちに違法になるとは言えません。
注意しておきたいポイントとして、就業時間内であるということは給料が出ているということです。
就業時間内に行われた飲み会のはずなのに賃金が支払われていないというのであれば違法となる可能性が高いので、その場合は給料を請求することができるでしょう。

就業時間外に行われる場合

就業時間外に行われる飲み会などの行事の場合は「業務命令」として労働者を参加させることはできません。飲み会に参加するかどうかは労働者の自由ですので無理に参加する必要はありません。
就業時間外に行われる飲み会に強制的に参加せられた場合、その理由によっては参加の強制が違法となる可能性があります。

例えば
・アルコールに弱いことを理由に断ったにも関わらず、飲み会に強制参加させられて飲まされ、結果体調を崩してしまった。
・飲み会に参加しなかったことを理由に嫌がらせを受けるようになった
・飲み会に参加しなければ評価を下げるなど不利益をちらつかされた
など、パワハラやモラハラに該当するような場合です。

また、就業時間外の飲み会でも「残業」として業務時間扱いして強制参加が認められる場合があります。
残業扱いということは当然残業代が支払われますし、残業させるということは通常は労使間で36協定(※)を締結しているはずです。
この場合に、飲み会の時間分の残業代が支払われなかった、そもそも36協定が締結されていなかったとなると違法となります。

※36協定とは…労働基準法第36条によって、企業は法定労働時間(1日8時間以内、週40時間以内)を超える労働や休日勤務などを命じる場合、あらかじめ労働組合と協定を結んで労働基準監督署に届け出しなければならないと義務付けられています。これが通称「36協定」です。
(36協定については、こちらで詳しく解説しています。「残業する時のルール労働基準法36条「通称:36(サブロク)協定」とは?」)

つまり、飲み会に強制参加させられるというのがまず就業時間内なのかどうか、強制参加しなければならない理由は何なのか、給料や残業代が支払われているかどうかなど状況によって違法になる可能性もあるということになります。

就業時間外の会社の飲み会や親睦会などの拘束時間は残業の対象?

「残業」の定義は?

一般に、法定労働時間(1日8時間)を超えて働くことをいいます。
ここで、そもそも飲み会や親睦会が残業といえるためには、これが「労働時間」といえなければなりません。残業代は労働時間に対して支払われるものだからです。
(残業の定義については、こちらで詳しく解説しています。「労働基準法における「残業」の定義とは?」)

「労働時間」の定義は?

労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされています。つまり、使用者に命令され、場所を拘束されている時間はすべて労働時間に当たるのです。

労働基準法での「使用者」とは

使用者とは、労働基準法第10条によって次のように定められています。

事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者

会社や法人そのものは使用者ですし、会社の取締役、個人経営店の店主なども使用者です。
ただし、仮に部長や課長などいわゆる中間管理職の肩書きだとしても、労働条件の決定権があるなど一定の権限を持っている場合は使用者と考えられることがあります。

強制なのであれば対象になる

(1)過去の裁判などの判例ではどういう結果になっているのか?

飲み会が労働時間といえるかを検討するにあたっては、判例の基準をもう少し理解する必要があります。

三菱重工長崎造船所事件(最一小判平成12年3月9日)

労働時間とは労働者が指揮命令下に置かれている時間をいい、客観的に判断する。
そして、労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できる。

この判例は、本作業に入る前の「着替え・散水の時間が労働時間にあたるか」が争われた事案でした。もっとも、上に抜粋した基準は、一般的に労働時間の判断をする際に使われています。
先ほど述べた通り、「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。そこで、「指揮命令下におかれているとはどのような状態なのか?」が問題となります。

この判例は、①「事業所内において行うこと」➁「使用者から義務付けられ、又は余儀なくされた場合である」と示しました。
もっとも①については、必ずしも社内にいることは必要ではなく、使用者から場所の指定を受けていることで足ります。
また、仕事の内容として「就業を命じられた業務の準備行為等」が挙げられていますが、これはあくまで例として挙げられたにすぎず、仕事の内容は問いません。

(2)飲み会やイベントの指示方法による

では、実際にこの基準に照らして、飲み会やイベントが労働時間にあたるかを検討してみましょう。
前提として、仕事の内容は問わないことから、社内の飲み会でも、接待のゴルフコンペでも良いということになりますね。

では、①「事業所内において行うこと」、➁「使用者から義務付けられ、又は余儀なくされた場合である」の2点から紐解いていきます。

①「事業所内において行うこと」

そこでまず①について見ると、飲み会やイベントというのは場所を指定して開催されるものです。
したがって、「使用者から場所の指定を受けている」という要件は充たすことになります。

➁「使用者から義務付けられ、又は余儀なくされた場合である」

次に➁について見ると、これはケースバイケースであるといえます。
例えば、「重要な取引先との飲み会があるから、必ず参加して」と上司に言われたとしましょう。この場合には飲み会への出席を余儀なくされていると言えます。
しかし、「うちの課で忘年会をするから、出られそうなら出てよ」と言われた場合、事実上出ざるを得ないかは別として、出欠の自由は与えられています。
この場合には「使用者から義務付けられ」てはいないので、➁要件を充たしません。
よって飲み会は労働時間にあたりません。

このように、飲み会やイベントが労働時間にあたるかは、「使用者によって強制されているかどうか」という観点から判断することができるのです。

交通費等は支給されるのか?

では、飲み会に参加するための交通費を会社から支払ってもらうことはできるのでしょうか?
これを考えるためには、そもそも会社は何を根拠にして交通費を出すのかを知らないといけないのですが、実のところ会社に交通費を払うよう定めた法律はありません。
つまり、交通費を出すことは義務ではないため会社が任意で決めてよいのです。

しかし、会社の気まぐれで交通費が支給されたりされなかったりしたら、困ってしまいますよね。そこで、多くの会社は、就業規則や労働契約書に交通費の支給条件を記載しています。
そのため、「就業規則の支給要件をクリアしているのであれば交通費が出る」というのがこの問いの答えになるでしょう。
飲み会が労働時間の要件を充たし、かつ就業規則に交通費の定めがある場合には交通費が支給されるというわけです。

監修弁護士

勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
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