「サービス残業」とは、時間外労働の正規の賃金(労働基準法が定める時間外労働手当)の全額を、使用者が認めなかったり、払わなかったりする時間外労働のことを指します。「サビ残」とか「賃金不払い残業」などと呼ばれ、労働基準法の違法行為であり、違反すると懲役刑、罰金刑を課せられます。

先日ヤマト運輸が約7万6千人の社員を対象に、未払いの残業代(サービス残業)の有無を調べ、支給すべき未払い分をすべて支払う方針を決めたという報道がありましたが、残業が常態(一般化)している企業は相当数に上ると思います。

一般企業に加え、金融機関、飲食店関係、電力会社、大学・専門学校などの教育機関、医療機関なども労働基準局による是正勧告を受けています。

法律で定められた労働時間とは?

労働基準法で定められている労働時間は、1日8時間、週40時間ですが、会社によっては違っています。それは、法定労働時間を超えて労働させる場合などには、あらかじめ書面による協定を結んでおけば、認められる「サブロク協定(36協定)」からです。また、最高裁は労働時間について「労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間」という判決を出しています。

「36協定を結んであるから残業をさせ放題」とはいきません。正規の残業代を支払うことはもちろんですが、現在の労働基準法には延長(残業)させることのできる時間が決められています。

また、現在政府が進めている「働き方改革」では、残業時間上限法案を提出する予定です。「年間で月平均60時間まで」という案が浮上していますが、企業・経済団体の反対が強く、特例を設けて協定への理解を求めようとしています。

美容師さんのカット練習はサービス残業?

さて本題に戻って、本来の営業時間を過ぎた夜9時や10時過ぎまで、カット練習に励む美容師さんたちは、サービス残業になるのでしょうか?
この問題のキーワードは、さきほどの最高裁の判例にあります。「労働者が使用者の指揮命令に置かれている場合は、労働時間」と認められるわけです。

例をあげると、始業時刻が午前9時の会社で、労働者が自発的に8時30分に出社した場合は、「労働時間」には含まれません。
しかし、その会社が始業時間の前8時30分に朝礼を行い、それに出ることが指示されている場合には、労働時間に含まれます。

美容師さんの美容室の営業終了後のカット練習はどうでしょうか。たとえば、使用者(経営者など)が、その練習を指示していた場合は、残業に該当すると思われます。指示はなく、労働者が自発的に自分の技術を高めたいと思い、カット練習をしている場合は、労働時間には含まれないと考えられます。

難しいケースは、使用者(経営者)が、労働者のカット練習の指導をしている場合です。使用者の指導の下、練習に励んでいるわけですから、残業にあたると考えられますが、労働者がより高い技術取得をめざし、使用者の指導をお願いしている場合は、残業にあたるのかどうか、難しい問題です。また、パティシエ(菓子職人)が、コンテスト入賞をめざして、経営者の指導を受け、練習を積んでいる場合もどうでしょうか。

考え方は、美容室やケーキ屋は、営業時間内は「美容室」であり、「ケーキ屋」で、オーナーは労働基準法でいう「使用者」にあたります。営業終了後は、オーナーが「指導者」の立場になり、「美容室」、「ケーキ屋」は、技術を学ぶ「教室」になるというものです。しかし、「技術を教える」という名目で、本来の残業にあたるものを認めないケースも散見されます。

参加が義務付けられており、欠席が続くと注意されたり、ペナルティが課せられるような場合は労働時間にあたると考えるべきでしょう。

サブロク(36)協定って何?

さきほど、ちょっと触れた「サブロク(36)協定」ですが、もう少し詳しく見ておきましょう。労働基準法36条に基づく労使協定で、「サブロク協定」とよく呼ばれます。会社や企業が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた時間外労働を命じる場合に必要となる取り決めです。労組などと書面による協定を結び、労働基準局に届けることが必要で、届け出をしないで時間外労働をさせると、労働基準法違反となり、懲役または罰金が科せられます。

「サブロク協定」を結べば、何時間でも残業させていいわけではありません。時間外労働の限度に関する基準があり、延長することができる時間数の上限を守らなければいけません。また、建設業や研究開発業務など、事業や業務の特性により延長限度が設けられていないものも事業あります。ただし延長限度が設けられていないだけで、サブロク協定の締結や届け出が免責されているわけではありません。

当然ですが、サブロク協定は、労働時間の延長を認めたもので、その残業代は定められた割増賃金として支払わなければなりません。

残業する時のルール労働基準法36条「通称:36(サブロク)協定」とは?