みなさんは会社の就業規則を確認したことはありますか?「雇用契約書に労働要件が記載されているから、就業規則までは見たことがない」という人も多いはずです。しかし、実際に就業規則を確認してみると、雇用契約書と内容が異なっているということもしばしばあります。では、就業規則と雇用契約書の内容が異なる場合、いったいどちらが優先されるのでしょうか。

1. 労働基準法(労基法)は「守らなければならないもの」

まず確認すべきなのは「労働条件、就業規則が労働基準法を下回っていないか」ということです。これはどういうことなのでしょうか。

そもそも、労働基準法は憲法の要請を受け、労働者を守るために規定された法律です。この法律は、従来労働者が劣悪な環境で働くことを強いられてきたという歴史的な経緯により制定されました。

そのため、労働基準法は労働契約の基本原則とともに、守らなければならない最低基準を定めています。具体的な内容としては、割増賃金の規定や就業規則の作成方法などについて法定しています。労基法は労働者保護のための法律ですから、使用者がこれに違反すると行政官庁から指導を受けたり、罰金を科せられることもあります。

2. 労働基準法(労基法)は「最低基準を定めたもの」

先ほど、労基法は最低基準を定めたものであるとご説明しました。これは、最低基準を定めておかなければ、使用者が不当な条件で労働者を働かせるおそれがあるからです。
最低基準の例としては、解雇や残業代、休暇、年少者の保護などの規定が挙げられます。

3. 労働基準法(労基法)の基準を下回る雇用契約や就業規則は無効になる

では、労働基準法の基準を下回る契約がなされた場合、その契約の効力はどうなるのでしょうか。ここで、労基法13条についてみてみましょう。

(この法律違反の契約)

第十三条  この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

この条文によれば、労基法に違反する労働条件はすべて無効とされます。しかし、「労働条件は無効になったから、この契約はなかったことにします。賃金も支払いません。」と言われてしまったら困りますよね。
そこで、労働基準法は、労働条件が無効になった場合、労働基準法自体が契約を規律する、と定めました。このような非常に効力の強い法律のことを、「強行法規」といいます。

例えば、残業代について「法定労働時間(8時間)を超える部分については、一割増しの賃金を支払う」という雇用契約が結ばれていたとしましょう。しかし、残業代について、労基法は以下のような基準を定めています。

第三十七条

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。(以下略)

この条文によれば、残業代は二割五分以上五割以下でなければなりません。したがって、このような契約は労基法に反し無効となります。かわりに、労基法に定められた「二割五分」という条件で残業代が支払われるのです。

4. 労働基準法(労基法)が最も優先される

就業規則は、法令又は当該事業場に適用される労働協約(労働組合と使用者との間の約束)に反してはならないとされています(労基法92条1項)。

先ほどから述べている通り、労働基準法の基準は「絶対」ですから、この条文によれば、法令又は協約に反する就業規則の該当箇所は無効になります。

5.就業規則と雇用契約

では、最初の問いに戻り、就業規則と雇用契約が異なる場合にはどちらを優先させるべきなのでしょうか。これについては労契法12条に定めがあります。

(就業規則違反の労働契約)

第十二条  就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

この条文は、労基法の強行的効力にとても似ていますね。この労基法12条によれば、就業規則は常に最低基準として働くことになります。すなわち、「就業規則を下回る労働条件(雇用契約)は無効」ということです。ただし、個別の労働条件で就業規則より良い条件の雇用契約を結ぶことは認められます。
以上のことをまとめると,労働基準法,就業規則及び労働契約において,異なる条件がある場合は,労働者にとって最も有利な規程が有効となるということになります。

6.まとめ – 「おかしいな」と思ったら

就業規則と雇用契約書を確認し、雇用契約書の条件の方が悪ければ、使用者に対しこれを直すよう求めることができます。具体的には、支払われていない残業代を請求したり、不当に長く働かせるのをやめるように請求することができます。

このような請求はもちろん自分自身で行うことができますが、職場環境が悪くなることを考え、なかなか自分からは言い出しづらいですよね。そこで、弁護士を積極的に活用することで、自分の権利を主張することをおすすめします。