「残業代を請求したいけれど、職場の居心地が悪くなりそうだから退職する」
「サービス残業が多いので、仕事をやめてから残業代請求をしたい」

残業代請求をするほとんどの人が、このような考えを持っています。
では、退職後に残業代請求をするには、どうしたらよいのでしょうか。

1. 退職後に残業代請求はできるのか?

結論を述べてしまいますと、退職後であっても残業代を請求することはできます。残業代は残業をした時点で発生しており、退職をしたとしても権利は消えないからです。
退職後に残業代請求をするメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット

  • 職場でのしがらみがない
    →残業代は法律上発生する当然の権利です。残業代を請求したからといって、会社から不利益な扱いを受ける理由はありません。ただ、そうはいっても、会社に対して残業代請求をすると、職場に居づらく感じられることもあるかも知れません。そういった場合は、退職後、職場とのしがらみがなくなってから残業代請求をするのが望ましいと思います。

デメリット

  • 残業時間を立証する証拠が手に入りにくい
  • 過去の残業代が毎月時効となってしまう

2. 2年という時効があるので計画的に

残業代を請求するとき、気をつけなければならないのは時効による消滅です。残業代も賃金債権ですので、給料日から2年経つとと時効の効果で消えてしまい、それ以降請求できなくなってしまうのです。

この点、誤解している方が多いのですが,「2年間で時効」だから,「退職後2年間経つまでに動けばいい」というのは間違いです。残業代は給料日から2年経つごとに毎月消えてしまいますので,退職直後であれば2年分請求でき、退職から半年経てば、1年半分しか請求できないことになります。
ですので、残業代請求をお考えの方は、できれば退職前に弁護士に相談いただき、退職直後には、残業代を求める内容証明郵便を発送できる用意をしておくのが望ましいです。

3. 在職中に準備しておきたい3つのポイント

退職後に残業代請求をするためには、在職中の準備が重要になってきます。以下の3つのポイントを抑えましょう。

①残業時間を立証する証拠を集めておく

退職後は、社内にある証拠を集めることが難しくなります。残業時間を立証できるもの(タイムカードや業務日誌など)や雇用契約、就業規則、賃金規程などは事前にコピーをとっておきましょう。また、タイムカードの制度がない会社の場合、パソコンのログが証拠となる場合があります。
在職中にご自分のパソコンのログを取得することをご検討ください。

パソコンのログの取り方はこちら

➁内容証明の準備をしておく

先に述べた通り、残業代は給料日から2年で時効にかかります。退職後すぐに内容証明が送付できるよう、弁護士への相談を行っておくことをお勧めします。

③裁判所に申し立てる準備をしておく

残業代を請求するには、裁判所に申立書を提出する必要があります。申立書の作成に時間がかかりますので、在職中に書いておきましょう。

4. 退職後の残業代請求の流れとは?

退職後の残業代請求の方法としては、①労働審判と➁民事訴訟の二種類があります。

①労働審判

労働審判は、裁判官と労働審判員のもと、当事者の話し合いで解決を図る制度です。
労働審判を行う場合、まず裁判所に申立書を提出する必要があります。そして、申立書が受理されると、申立から40日以内に第1回の審判期日が指定されます。

1回目の労働審判では双方が同席し、5分から10分ずつ自分の事情を説明します。その上で、裁判官や労働委員から質問を受けることになります。第二回の期日では、主に証拠調べを行います。自分の意見が述べられるのは第二回までになりますので、言いたいことや質問がある場合にはこの日までに準備しておきましょう。第三回には調停が行われ、当事者で合意するか、審判で言い渡しがなされます。

メリット

  • 原則として3回以内の期日で審理が終わるため、迅速に解決できる

デメリット

  • 早期解決のために金額を譲歩しなければならないことがある
  • 付加金(裁判所が支払いを命じる、未払い残業代と同額の金銭)は支払われない

➁民事訴訟

いわゆる「裁判」です。具体的には、裁判官による判決か、または和解により決着をつけます。

こちらも、まずは裁判所に申立書を出すところから始まります。第一回期日ではお互いの主張を聞き、第二回期日で証拠調べをする、というところは労働審判と同じです。しかし、民事訴訟は主張が出し尽くされるまで続きますので、期日が何回行われるかはケースによって異なります。

メリット

  • 付加金が支払われることがある、全額請求が認められることがある

デメリット

  • 訴訟が終了するまで1年ほどかかる
  • 裁判所に何回も足を運ばなくてはならない

5. その他の注意点

年俸制や、固定残業代でも残業代は発生します。基本給から時給換算し、残業代を計算してみましょう。仮に自分で計算した残業代が、もともと支払われている残業代を超えている場合には、会社に対し支払いを求めることができます。

「残業代込の金額だから、基本給がわからない」という場合もありますが、これは本来違法です。
いずれにせよ、残業代請求をお考えの方は、早い段階で、弁護士にご相談いただくのはよいかと思います。