近年問題になっているのが「ブラック企業」の存在です。ブラック企業とは、長時間労働、使い捨て、パワハラなど違法な条件の下で労働者を働かせる企業のことを指します。

中でもブラック企業にありがちなのが、本来支払うべき残業代を出さないという違法行為です。法律をあまり知らないと「そういうものかな」と思ってしまいますが、実は残業代が支払われるべきだった、なんてことも。
そこで危険なブラック企業の特徴について見ていきましょう。

1. 雇用契約書で同意してるから残業代は出ない

なんとなくサインした雇用契約書を見返してみたら「残業代は支払わない」の文字が…。

しかし、そもそもこのような条項は無効です。法定労働時間(8時間)を超えた労働や、深夜労働に残業代を支払わなければならないということは、労働基準法によって定められているからです。そして、この法律は「強行法規」と呼ばれ、当事者の契約によって変更することができません。つまり、契約書に何と書いてあろうが、残業代は支払わなければならないということになります。

雇用契約書に「残業代は支払わない」と書かれていれば、それだけでブラック企業だと判定できます。

入社時の雇用契約書に残業代が出ないことへ同意していた場合、残業代は出ないのか?

2. 定時を過ぎるとタイムカードが押せない

時給当たりの給与や残業代は、労働時間に合わせて支払われます。そのため、終業時刻を打刻しておくことは非常に重要です。労働時間がわからなければ、裁判によって残業代を請求することもできないからです。
定時を過ぎるとタイムカードが押せないということは、労働時間がわからず、残業代請求をする場合には苦労することとなります。

ただ,そのような場合でも,パソコンのログを取得したり,出退勤時間を手書きメモにつける,スマホのGPS機能で出退勤時間の記録を取るなどの方法で,残業代請求が可能となる場合もあります。

タイムカードがない場合

3. 固定で残業代が含まれていて残業代が出ない

固定残業代制度とは、会社があらかじめ残業時間を想定し、基本給に加えて一定の固定残業代を支払うというものです。ここで、固定残業代制度を導入すること自体は、法律に反することではありません。
しかし,そのことを悪用して,基本給を低額にして固定残業代を高くしておくことで,残業代の支払を実質的に免れようとする企業が散見されます。

例えば、同じ月給25万円でも,「基本給25万円」という条件と,「基本給15万円、固定残業代10万円」という条件とでは,残業代に関しては全く異なる条件となります。「基本給25万円」の人が月に50時間残業した場合は,残業代が約10万円発生しますが,「基本給15万円、固定残業代10万円」の人は月に90時間残業しても固定残業代を超える残業代は発生しないこととなります。

もっとも,月に45時間以上の残業時間分を定めた固定残業代については無効とする裁判例もありますので、争う余地はあります。

では、固定残業制によって当初想定された残業時間を超えて働いた場合にはどうなるのでしょうか。この点、ブラック企業は「固定残業制だから、追加で残業代は支払われない」と説明し、残業代の支払いを拒みます。しかし、法律上は超過部分については別途残業代が支払わないといけないのです。

4. 年俸制で残業代が出ない

年俸制を採る会社は高給取りのイメージがありますが、実際には過酷な長時間労働を強いられることがあります。年俸制の場合は残業代は出さなくていいと勘違いしている企業もありますが,そのようなルールはありません。
年俸制であったとしても,残業した分についてはきちんと残業代が払われなければならないのです。

5. 管理職なので残業代が出ない

「管理職には残業代が出ない」という話を聞いたことがありませんか?
確かに、法律にはこう書かれています。

(労働時間等に関する規定の適用除外)

第41条
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一  略
二  事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三  略

労基法41条によれば、「管理監督者」は労働時間の規制を受けないため、残業代が支払われません。しかし、この地位はそう簡単に認められるものではないのです。裁判例によれば、以下の3要件を満たした場合のみ「管理監督者」として扱うことができます。

  1. 労務管理についての経営者との一体性(経営事項や人事に関する権限を有する等)
  2. 労働時間管理を受けていないこと
  3. 基本給や手当において、その地位にふさわしい処遇を受けていること

要件をみてもらえばわかる通り、「管理監督者」にあたるためには、残業代を支払わなくても十分な給与、待遇を受けている必要があります。
ブラック企業の多くは、この要件を満たさない「名ばかり管理職」の地位を与え、残業代を支払わないという手段を採っていますので気をつけましょう。