正社員でも、アルバイトでも、月々の残業時間に応じて残業代が支払われます。
しかし、会社から支給される残業代は正しい計算に基づくものでしょうか?実は、残業代の計算には様々なルールがあるのです。損をしないためにも、残業代をきっちり請求しましょう。

1.残業時間とは

残業時間とは、1日の労働時間のうち、法定労働時間である8時間をひいた部分をさします。法定労働時間とは、実際に働いた時間を指しますので、休憩時間は除く必要があります。

ここで注意が必要なのは、労働時間とはどこからどこまでを指すか、ということです。判例によれば、労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされています。
労働基準法における「残業」の定義とは

つまり、使用者に命令され、会社にいなければならない時間はすべて労働時間に当たるのです。実際の具体例を見てみましょう。

朝の会議 事実上出席しなければならないのであれば、労働時間にあたります。
休憩中の電話番、来客対応 「休憩中していても、かかってきた電話はとって」と頼まれることはありませんか?電話番や来客対応が義務付けられているのであれば、その時間は労働時間となります。
制服に着替える時間 制服の着用が義務付けられており、所定の更衣室で着替えることがルールとされているような場合は、労働時間にあたります。
仮眠時間 仮眠時間であっても、連絡があったらすぐに対応することが義務づけられているなど、職場から離れることができないのであれば労働時間にあたります。
通勤時間 × 残念ながら、通勤時間は業務を命令されているわけではないため、労働時間にあたりません。

2.残業代計算のポイントは「割増率」

残業代は、働く時間帯や残業時間によって変わります。時給にプラスされる割増率が変わってくるからです。
時間別の割増率は、以下の通りになります。

時間外労働:1日8時間を超える部分の労働時間 25%
深夜労働:午後10時~翌午前5時 25%
休日労働:週一日以上取らなければならない法定休日に働いた場合 35%
時間外労働が、深夜(午後10時~翌午前5時)に行われた場合 50% ※時間外労働として25%+深夜労働として25%
休日出勤をし、深夜(午後10時~翌午前5時)に働いた場合 60% ※休日労働として35%+深夜労働として25%

3.月に60時間以上働いた場合

平成22年、労働基準法に残業代についての新しいルールが加わりました。

労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。(以上、抜粋)

この条文が何を言っているのかというと、「1か月60時間以上残業した場合には、60時間を超えた時間については、割増率が25%ではなく50%にアップする」ということです。
残業代を計算するときには、1日当たりの残業時間だけでなく、1か月あたりでの残業時間集計になる点についても注意しましょう。

ただし、この規定は、現時点では一部の大企業にのみ適用され、以下の表にあるような中小企業では猶予されています。

業種 資本金の額または出資の総額 または 常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下 または 50人以下
サービス業 5,000万円以下 または 100人以下
卸売業 1億円以下 または 100人以下
その他 3億円以下 または 300人以下

4.残業代を請求する方法

では、自分で残業代を計算してみた結果、支払われるべき金額をもらっていなかった、という場合にはどうすれば良いのでしょうか。

最も簡単な方法は、直接会社に請求することです。会社に請求するときには、必ず残業時間がわかるものを持っていきましょうね。給与明細に正しい残業時間が書かれていれば給与明細を、そうでなければタイムカードや業務日報のコピーなどを持っていくと良いでしょう。

タイムカードがない場合の対処方法はこちら

問題なのは、会社が支払いを拒んだ場合です。このときには、以下のような対応策が考えられます。

・労働基準監督署に申告をする

労働基準監督署に対し未払いの残業代がある旨を申告すると、会社に対して指導・勧告をしてくれます。

メリット:会社自体に指導が入るため、職場全体の未払い残業代が支払われる
デメリット:未払い分全額が支払われるわけではない

・裁判を起こす

未払いの残業代を支払うよう、会社を相手取り裁判を起こす方法です。弁護士を付けずに本人が裁判することも可能ですが、多くの場合は、弁護士に依頼しないと難しいと思われます。

デメリット:時間やお金がかかる人によっては会社の居心地が悪く感じる
メリット:遅延損害金(支払いが遅くなった分の利息)が支払われる

・労働審判を行う

労働審判も、裁判所を介入させて解決する方法になります。裁判と異なるのは、裁判官だけではなく労働審判委員という専門家が立ち会う点です。

メリット:迅速に解決できる(通常3回以内の期日で終了する)
デメリット:会社が審判内容に異議を出せば裁判に移行する

残業代の計算は、慣れてしまえば難しくありません。会社から残業代をもらいっぱなしにするのではなく、必ず自分で確認しましょう。
なお、未払いの残業代を請求する場合には、時効に注意が必要です。賃金債権は給料日から2年で時効にかかり、請求できなくなってしまいます。請求する場合には早めに行動しましょう。