「うちの会社、みなし残業だから残業代出ないんだよな」

最近、残業代についてこのような話をよく聞きます。しかし、そもそも「みなし残業」とは何なのでしょうか?

1. みなし残業とは

労働法上の要件をみたせば、実際どのくらいの時間働いたかにかかわらず、一定時間労働したこととみなすことができます。これを「みなし労働時間制」といいます。

たとえば、みなし労働時間を「8時間」と設定した場合には、7時間しか働かなくても、10時間働いたとしても、8時間分のしか働いたことになりません。つまり、給与の算定対象は「8時間」分の労働のみです。このように、みなし労働時間制を採用しているために、残業しても残業代がでないことを、一般的に「みなし残業」と呼びます。

みなし労働時間制はすべての職種に適用できるわけではなく、時間管理が難しいものに限られます。たとえば、みなし残業が多い業種として、外回りの営業やツアーガイド(事業場外労働)、研究職やデザイナー(専門業務型)などが挙げられます。

みなし労働時間制を使っている会社は数多くありますが、みなし残業制だから残業代を払わないということが許されるケースはごく例外的なものです。実は、多くの会社の場合は、みなし労働時間制を使っていても、通常どおり残業代が請求できるのです。みなし労働時間制だからと諦めないで、是非一度ご相談ください。

2. 就業規則の記載例と計算方法

(1)就業規則の記載例

みなし労働時間の記載例は、以下のとおりになります。なお、これは事業場外みなし労働制を採用する場合の記載例です。

第○条
従業員が、就業時間の全部または一部について、事業場外で勤務する場合であって、就業時間を算定し難いときは、所定の就業時間を勤務したものとみなす。ただし、所定労働時間を超えて労働することが通常必要となる場合で、労働基準法第38条の2第2項に基づく労使協定が締結された場合には、労使協定で定めた時間労働したものとみなす。

(2)計算方法

みなし労働時間制度の計算方法はやや複雑なので、ここでは基本的な計算方法のみご紹介しましょう。

①みなし労働時間制が適用される勤務を把握する

たとえば、外回りのセールスマンの場合、会社の中で資料をつくることもあれば、外に営業にでかけていることもありますね。
この場合、1日で内勤+外勤をしていることになりますが、会社によってどの部分をみなし労働時間としているかが異なります。

  • 内勤と外勤をあわせてみなし労働時間制を適用する
  • 内勤は実労働時間で計算し、外勤はみなし労働時間制を適用する

自分の会社がどちらを採用しているのか確認しましょう。

➁1日の労働時間を計算する

つぎに、1日の労働時間を計算してみましょう。

  • 内勤と外勤をあわせてみなし労働時間制を適用する場合
    1日の実働時間にかかわらず、最初に設定されたみなし労働時間が働いた時間としてカウントされます。
    (例)みなし労働時間は8時間/内勤4時間/外勤5時間
    →実労働時間は9時間だが、給与対象になる労働時間は「8時間」とカウントする
  • 内勤は実労働時間で計算し、外勤はみなし労働時間制を適用する
    内勤は実労働時間、外勤はみなし労働時間を基準として、働いた時間を計算します。
    (例)みなし労働時間は3時間/内勤4時間/外勤5時間
    →内勤4時間+外勤3時間(みなし労働時間)で「7時間」とカウントする

③残業代を計算する

➁で出した労働時間が8時間を超えた場合、時間外労働として残業代が出ます。

3. みなし残業のメリット・デメリット

では、みなし残業のメリットやデメリットはどこにあるのでしょうか。

メリット

  • 時間管理が楽
  • 仕事が早く終わっても、所定労働時間分の給与がもらえる

デメリット

  • サービス残業が増える
  • 部分的にみなし労働時間制を採用している場合、給与体系がわかりにくくなる

4. 固定残業との違い

みなし残業と似ている制度として、「固定残業」というものがあります。

固定残業とは

会社があらかじめ残業時間を想定し、基本給に加えて一定の固定残業代を支払うというものです。しかし、あらかじめ残業代を払っているからいくら残業させてもよい、というわけではありません。上限として設定された残業時間を超えた場合には、追加で残業代請求をすることができます。

ネット上では、この固定残業を指して「みなし残業」と呼んでいる場合もあります。そもそも「みなし残業」という言葉は法律用語ではありませんので、この使い方も間違いではありません。

しかし、固定残業の場合には、当初想定された残業時間を超えると残業代が請求できますので、みなし労働時間制とは異なるということを覚えておきましょう。

5. 違法なケースの例

「みなし労働時間制」を採用するには、厳しい要件をクリアしなければなりません。

しかし、法律上の要件を満たしていないにもかかわらず、みなし残業をさせている会社が多いのも現状です。

  • 労働基準監督署に届出を出していない
  • 深夜まで残業をしたり、休日出勤をしたのに残業代が出ない
  • 会社の具体的な指示のもとで仕事をしている
  • 給与を実労働時間で割ると、最低賃金を下回る

上記のような事情がある場合、みなし残業は違法です。弁護士にご相談ください。

6. みなし残業制度が正しく使われない理由

みなし残業制度は、労働時間を厳密に管理する必要がないという意味で、会社にとってとても便利な制度だといえます。

しかし一方で、この制度を悪用する会社が後をたちません。いくら働かせても、一定の給料を出せばよいと考えているからです。

本来「みなし労働時間制」を採用するには厳しい条件が必要ですから、そう簡単にみなし残業をさせることはできません。労働条件に疑問を持ったら、是非一度、当事務所にご相談ください。